2023.03.13
【東大現代文10年分講評ーエピローグ】
【東大現代文 60%突破戦略】 【傾向】 <第一問> ・評論文 ・40分以内 ・内容説明 or 理由説明 3問 (80字以内) ・全体要旨 1問 (120字以内) ・時代の最先端の話題が多く、 高度な論理的読解力を必要とする <第二問> ・小説 or 随筆 ・30分以内 ・内容説明 or 理由説明 3問 (80字以内) ・文系専用問題らしく、 高度な想像的読解力を必要とする 【対策】 <第一問> ・可能そうであればその都度問題を解く ・難しいと感じたら無理に解かず 本文をひととおり読み終えてから解…
2023.03.13
【東大現代文10年分講評ー10】2014年度
【2014-1】 藤山直樹「落語の国の精神分析」 <感想> 東大受験生としては標準レベル、 40分程度で仕上げたい。 「落語家と精神分析家の共通点」、 それは 「互いに分裂を孕みながらも なんとかひとりの人間としての 統合を保っている」、 それがそれぞれ観客と患者に、 「生きる希望」を与えているそうな。 流石に本年度がホネがなさ過ぎたか、 翌年度の問一は一気に難しくなる。 <(一) 内容説明 やや易> ポイント: 落語家と分析家の共通の孤独とは 落語家と分析家は共通して、 常に客に成…
2023.03.12
【東大現代文10年分講評ー9】2015年度
【2015-1】 池上哲司「傍らにあること」 <感想> 2014ー2023の10年間で、 2014の問二、2016の問二、 と並ぶ難問。 一読しただけで理解できる受験生は、 東大受験生レベルでも1/3程度では。 「自分を判断するのは他者、 しかし決定するのはあくまで自分」、 「死してなお後世に影響を 与えるような自己たるべく、 他者評価からの自由・逸脱を志向し 燃えて生きろ」という文章。 <(一) 理由説明 やや難> ポイント: 不変の自己なんてそもそもいない あるのは 「現在」に主…
2023.03.11
【東大現代文10年分講評ー8】2016年度
【2016-1】 内田樹「反知性主義者たちの肖像」 <感想> 例年ハズレなしの 東大現代文に於いても、 特に名文だった年。 「『無知の知』を忘れ、 他者の意見を 真摯に聞けない傲慢な者は、 いかに知性があろうと 反知性の烙印を押すべき」。 「知性とは集団的叡智であり、 周囲のパフォーマンスを いかに高められるかで測られる」。 まさに「ノブレス・オブリージュ」、 教養とは他者の幸福のために培うもの。 人間は常に人間関係の中で生きるもの。 難易度は標準、前年と比べかなり易化。 時間は40分以内を目指したい。 <(一…
2023.03.10
【東大現代文10年分講評ー7】2017年度
【2017ー1】 伊藤徹「芸術家たちの精神史」 <感想> この年から設問が一問減った。 しかし難易度は前年度よりやや難化。 時間も、設問が一問減ったにも 関わらず、40分程度はかかるかしら。 論理展開にしっかり ついてゆけていると感じる場合は、 ある程度前後を読めば、 もう都度設問を解いても構わない。 しかしたとえば今回の文章のように、 やや難しいと感じる場合は、 無理をせず本文を最後まで読み切ろう。 二度三度読むと、 きっとだんだんと解ってくる。 「怪物のような技術が 止まることない進化を続け、 ついには神話まで打ち砕き、 人間には拠る…
2023.03.09
【東大現代文10年分講評ー6】2018年度
【2018ー1】 野家啓一「歴史を哲学する」 <感想> やや難。40分。 歴史 =直接観察・知覚不可 =「理論的存在(」理論的構成体) =「理論的探求」が必要 =発掘・資料批判・年代測定など =その実在を確証するためには 「物語のネットワーク」が必要 =歴史は「物語り行為」。 例年のような、 現代社会の最先端の問題を 論じる文章でなかったが、 東大現代文にたがわぬ、 素晴らしい文章であったことは 相変わらず。 <(一) 内容説明 やや難> ポイント: 素粒子の証明の背景に物理学理論 …
2023.03.08
【東大現代文10年分講評ー5】2019年度
【2019-1】 中屋敷均「科学と非科学のはざまで」 <感想> 標準レベル。35分程度で仕上げたい。 論旨は非常に明快。 仏教の「中道」や、 アリストテレスの「中庸」にも繋がる。 世界は白か黒かではない。 秩序と無秩序のはざま、 科学と非科学のはざまの、 「グレーゾーン」にこそ、 人間の叡智も幸福も宿る。 <(一) 内容説明 標準> ポイント: 世界は無秩序なのに生物は有秩序 エントロピー増大の法則(無秩序) が支配する自然界に於いて、 有機物である生物が、 秩序ある「形あるもの」として 存在することは、 極め…
2023.03.07
【東大現代文10年分講評ー4】2020年度
【2020ー1】 小坂井敏晶「神の亡霊」 <感想> 一般受験生レベルだと難。 東大受験生レベルだと標準。 35~40分程度で仕上げたい。 テーマはよく耳にする「自己責任論」。 筆者の論理展開も明快。 そして筆者と東大の主張はもちろん 「さよなら自己責任」。 <(一) 理由説明 やや難> ポイント: 米国では格差の責任は社会でなく個人 機会均等・自由競争の米国社会では、 弱肉強食のルールが正当化され、 格差の責任は 社会でなく個人に帰せられるため、 平等を追求する動きは育ちにくいから。 …
2023.03.06
【東大現代文10年分講評ー3】2021年度
【2021ー1】 松嶋健「ケアと共同性」 <感想> 東大受験生からすれば やや易しかったか。 前年度比もやや易化したか。 40分あれば仕上げられたのでは。 前年度に続き「さよなら自己責任」。 「してあげる側/される側」 の単純な二元論を超えた、 「あらゆる関係性を含む動的な関係」 としての「ケアの理論」という、 これまた流石最高学府! という素晴らしい文章だった。 <(一) 内容説明 標準 > ポイント: 一元的でない相互的な深いつながり タイのHIV感染者と エイズ発症患者による、 一元的ではな…
2023.03.05
【東大現代文10年分講評ー2】2022年度
【2022-1】 鵜飼哲「ナショナリズム、 その<彼方>への隘路」 <感想> またも素晴らしい文章。 東大は常に 受験生の固定観念を揺さぶってくる。 今回は「ナショナリズムは幻想」。 難易度としては、 取り組み易かった前年度(2021) よりさらにやや易化した印象。 力ある受験生なら、 30分程度で仕上げられるだろう。 東大受験生は、 論理のルール(同値・対比・因果)を 身に着けるのは同然ながら、 「ことばはチカラだ!」(河合) などで語彙力を、 「読むだけ小論文」(学研) などで現代社会の広く浅くの論点を、 押さえておくことは必須だろう…