9~10歳の子供は、物事を客観視できるようになります。身体も成長し、運動能力も発達するため、それまでよりもできることが増えます。その反面、成長には個人差も大きく、自分と周囲の友達や兄弟を比較し、「できること」「できないこと」がわかるようになる時期でもあります。「10歳の壁」は、「生活面」「学習面」「体力面」の3つに表れます。
①生活面では
子どもたちは、親や先生等の大人の評価よりも自分と同世代の友達からの評価を第一に考えるようになります。友達から悪い点を指摘されると、両親が「大丈夫」とフォローしても、聞いてくれないこともあります。また、客観的な判断力が付き始めるため、「友達と比べて自分はできない」と周囲に対し劣等感を抱きやすく、「どうせムリだよ」等と態度に出始めます。
②学力面では
算数において、つまずきやすいことが知られています。4年生では「四則計算」と呼ばれる、足し算、引き算、掛け算、割り算が混ざった計算が登場します。また、「1億を超える数」や「概数(およその数)」、「角度」といった、イメージのしづらい問題も出てきます。理解のできない項目が増えることも「10歳の壁」の原因のひとつです。
身体が大きく成長するのもこの頃です。しかしその成長には個人差があり、ある子はあっという間に背が大きくなるのに、別の子はそれほど背が伸びていない、ということもよくあることです。また、身体的な変化とともに、運動能力にも差がつきはじめます。自分を客観的に見ることができるようになるため「自分は運動ができる(できない)んだ」とはっきり自覚し始めます。
やっかいに思える「10歳の壁」ですが、これは大きな成長の証であり、子供が大人になるために乗り越えなければならない「壁」なのです。壁を超えるためには、
これまでは正論でルールを教えてきた両親に対しても、客観的に見ることができるようになるので、躾のつもりで「ああしなさい、こうしなさい」と言っても、「そんなこと言ったって~」と反発されることになりかねません。子供扱いをせずに本音で話しましょう。失敗を怒るのではなく、「私も小さいとき同じ失敗をしちゃったのよ」等と「大人の秘密」を共有するのもいいでしょう。
人と比べられることで自尊心を損ないやすい年頃です。兄弟や友達と比べるのではなく、「できたことを褒めてあげる」ことが大切です。例えば、テストの結果も「お兄ちゃんはいつも満点だったわよ」ではなく「前より10点も上がったじゃない!」というように、自己肯定感を高めてやる気を引き出す言葉をかけてあげることが重要です。勉強が苦手な子でも、家事を手伝ってもらうことで褒めるポイントが見つかります。褒められて「家族の役に立てているんだ」という実感を持つことで、子どもの自己肯定感が養われます。
勉強で抽象的な概念が増えてきたら、学習内容と生活場面を繋げてあげましょう。例えばスーパーに198円の商品があれば「これを4つ買ったらいくらになる?」と聞いてみましょう。子供はがんばって暗算で計算するかもしれません。その時に「1つだいたい200円だから~」と話をしてみれば、およその数という「がい数」の概念が少し身近になるはずです。同様に「単位」や「小数点」などの抽象的な概念もできるだけ生活に結び付けて話すことで、身近で具体的なものとして理解しやすくなります。
「得意なこと」がある子どもは自信を持てるため、自己肯定感が高まります。例えば本が好きな子であれば、たくさん本を読めることを「長所」として見つけてあげましょう。また、運動ができないコンプレックスは同じ「運動」というジャンルの中で克服できれば解決しやすくなります。例えば短距離走では足が遅い子でも、マラソンなら結果を出せることがあります。球技や体操、水泳など、運動と言っても幅広いジャンルがあります。ひとつでもいいので、何か得意な種目があれば「これなら負けないぞ」と自信を持つことができます。
子どもが9~10歳になったころに立ちはだかる「10歳の壁」。それは決して悪いものではありません。大人の階段の1段目なのです。この壁を乗り越えることにより、子供は強く成長します。子供をあたたかく見守り、手助けをしてあげることで、「10歳の壁」を越えることを願っています。
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