ある大学の講義で、学生に保護者インタビューをさせたそうです。その中の一人の学生が、「私が小中学生の時、父は週末、ほとんど家にいなかった。何をしているのだろうと思っていたが、実は、仕事に関する勉強や調べ物で図書館にいた。そんな父を改めて尊敬するとともに、父の仕事のことを何も知らなかったをことを実感した」と書いていたそうです。
ほかの多くの学生も「今回のインタビューで、親がどのように仕事と向き合ってきたかを初めて知った」とレポートに書いていたといいます。子供は親が家にいる姿しか見ていません。言葉で伝えない限りは、職業や役職等から想像するしかありません。
仕事観を育てるとは、具体的にどの職業に就くかを決めたり、大企業や公務員等に就職することがゴールだと考えがちです。しかし、それは間違いです。就職はこれから何十年と続く人生のスタートでしかないからです。
子供には、仕事の尊さ、仕事の喜び等を積極的に話したほうがいいと思います。お金を稼ぐ、稼ぎ続けるということは、昨日よりも今日、今日よりも明日と、成長し続けるということであり、人間の喜びです。
挑戦 → 結果 → 結果を仲間と分かち合う → 新たな挑戦
この成長サイクルを味わえるのが仕事の醍醐味です。働くことによって自分を成長させることを「楽しい!」とポジティブにとらえられる子供は、強くなります。そんな子供は、どんな市場でも「稼げる人材」になります。
もちろん、仕事は楽しいことばかりではありません。高い目標に挑戦し、自分を成長させていこうとすれば、当然ながらその過程で大変な苦労もあります。しかし、それは「働くことはそれほど楽しくないけれど、お金のために我慢しよう」という大変さとは違います。子供に、どちらの人生を選択してほしいかといえば、圧倒的に前者です。挑戦が、さらなる楽しい仕事を呼びこむということを、話してあげてください。
こうした仕事観を伝えることなく、勉強やスポーツでいい結果を収めること、有名な会社に入ることだけを目標としてしまうと、働き始めてから、「親のすすめる会社に入ったけれど、好きではない」「安定しているといわれて公務員になったけれど、自分には向いていない」と挫折感を味わうことになります。
「勉強しなさい」と何回も言うより、「仕事が楽しくてたまらない」と伝えるほうが、効果はあります。「仕事はこんなふうにおもしろいんだよ」「こんなプロジェクトに挑戦したけど、すごく勉強になった」等と親自身の仕事の喜びを語ることのほうが、子供の学習意欲を刺激し、職業選択の助けになります。
人によって「楽しい」「やりがいがある」と思うことは違います。だからこそ、自分が「価値」を置いているものにしたがって、仕事を選ぶことの意味を教えてあげて下さい。「価値」抜きで、給料や会社の規模、安定性等で仕事を選ぶと、10年後、20年後、「いったい自分は何がしたいのか」と悩むことになります。人生の満足度が、低下してしまうのです。「価値」ありきで仕事を見ていくことの大切さを伝えて下さい。
価値のある仕事を選ぶと同時に、その仕事が長期的に見て、問題がないかどうか、冷静な目を持つことも重要なことになってきます。
「好きなことを仕事にしたい」という子供の中には、「洋服が好きだから」とアパレルショップの販売員になったり、「体を動かすのが好きだから」とジムのトレーナーになったりするケースもあります。
親としては、「好きなことがあるならそれでいい」と思う気持ちもあれば、「店長やマネージャーになってから先のキャリアパスが描きにくく、長く働き続けるのが難しい仕事だから賛成しにくい」と感じる部分もあると思います。
子供は、仕事を業界・業種全体で捉えることができません。アパレル業界なら、自分が接したことのある販売員という仕事しか目に入らないのです。しかし、アパレルには、デザイナー、パタンナー、広報PR、バイヤー、営業企画等、様々な仕事があります。業界全体に目を向ければ、商品企画を専門におこなう会社もあれば、アパレルブランドからPRを専門に請け負っている会社もあります。語学力があれば、外資系ファッションブランドで活躍することも可能です。また、服に限らずものづくりが好きなのであれば、シェフやパティシエ、伝統工芸の職人等を目指し、将来は店を持つ、という選択肢もあります。
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