まだ少し先のことだが、毎年入試が終わると
「入試問題を当てました」とか「ズバリ的中!!」などといって騒ぐところがある。
予備校や塾など集団授業主体でやってるところが多いが、その先鋒・メッカは河合塾である。
40年前(あれっ、まだ2023年だっけ。2024年としてくれたまえ)の1984年、共通テストの前身:大学入試センター試験の更に前身である共通一次の頃、すなわち共通テストが共通一次であった頃、テキストでなく模試だったとは思うが、河合塾の現代文講師であった故牧野剛氏がその共通一次テストの現代文の文章はおろか設問までも含めてまるまる的中させたのである。模試を受験した受験生は驚くと同時にシメタと思ったか、模試を復習しとけばよかったと思ったかは知らぬが牧野剛氏は一躍時の人として有名になった。そしてこれをきっかけに大学入試で河合塾をはじめ代々木ゼミナールも参戦して翌年の入試から「ズバリ的中」ブームならぬ一大宣伝が始まった。いわく「うちの予備校の模試・通常テキスト・講習会テキスト・冬期直前講習テキストから入試とまったく同じか、部分的には違いがあるがほぼまったく同じ問題が出てるんです」というものである。科目も現代文のみならず、英語・数学・物理など受験全教科におよぶ。更にこれは高校入試にまで波及し、地方の地元大手塾にはHPでズバリ!!的中と称して当塾のどこぞのテキストから(ほぼ)同じ問題が出ましたと大々的に宣伝してるところもあるし、ひどいのになると当塾でもっとも塾生の多い〇〇中学校の定期テストに中間期末直前対策でやっとのと同じ問題が出ましたと堂々宣伝してるとこともある。
まあ確かに「ズバリ!!的中」したのだろう。しかし大学高校入試問わず、なかには「ズバリ?的中」なものも含まれる。
もっとも河合塾の模試やテキストから、例えばすでに廃止された大学入試センター試験と同じかそれに近い問題が多かったのも事実である。しかしこのズバリ的中、実はカラクリがある。受験者数が日本で一番多かった大学入試センター試験を例に説明しよう。
大学入試センター試験は現行の共通テストと同様、独立行政法人である大学入試センターが作成するのであるが、まずはその作成方法であるが、独立行政法人:大学入試センターが選んだ主に国公立大学の教授に問題作成を依頼し、作ってもらう。その完成時期は前年の4月頃。来年1月実施の共通テストは実は今年の4月にはもう完成してるのである。ただ完成とはいってもまだ仮完成の状態。ここからがポイントなのだが、独立行政法人:大学入試センターはその完成した問題の校正作業をある大手予備校に依頼するのであるが、その予備校が河合塾なのである。当然、問題は厳重管理であり、関係者にも守秘義務が課せられるのだがここで河合塾は翌年の大学入試センター試験(現在は共通テスト)の内容を完璧に把握することができるのである。これがズバリ!!的中のカラクリだ。
えっ!なぜ独立行政法人:大学入試センターは河合塾に最悪問題流出の危険があるのに河合塾に校正を依頼するのかって?それは常日頃象牙の塔に閉じこもっている、ある意味世間知らずとまではいわぬものの受験業界知らずの大学教授の作成した問題が例えば極端に難しかったり、易しかった場合は炎上の比ではない、マスコミその他の集中砲火を浴びることになるからである。だから河合塾に校正を依頼するのであるが、それでも例えば「大学入試センター試験数学2010年の惨劇(⇒数学ⅠAの第3問と第4問がセンター試験としてはありえない難しさであった)」と呼ばれるような悲劇が起こることがある。もっともこの悲劇は独立行政法人:大学入試センターではなく、むしろ校正担当の河合塾の責任なのである。1984年の共通一次国語現代文も河合塾は校正をしていたはずだ。それをマーク式の全統一次模試に反映できたのは、すでに独立行政法人:大学入試センターと河合塾がなあなあの関係にあり、かつ当時の河合塾と駿台の熾烈な生徒争奪戦にあった。ボクが浪人して駿台生になったのは84年以降だが、その頃の河合塾は自前の東大オープン模試を駿台の東大入試実戦と同じ日程にぶつけてきたり、またこれはボクも含めた当時の駿台午前部生のほぼ全員が驚きとともに経験してることだが、第3回東大入試実戦模試受験終了後、受験会場から公道に出た直後に「河合塾です!!」とダイレクトハンドでアルバイトとおぼしき女子大生からチラシを受け取ったのだが、なんと!!東大ナイターオープンと称する「急遽実施決定となった」とする午前昼でなく夕方夜間の時間を使った東大志望者のための模試案内を渡された。通常の東大オープンより安価ではあったが、自分は受験しなかったが。ちなみに「共通一次国語現代文問題をズバリ!!的中させた」故牧野剛氏は
ボクが今月18日の「パラグラフリーディングに気を付けよう」で紹介した藤田修一師の記号読解を「意味がない」と批判していたというが、早稲田大学の学園祭に講演に来たことがあったが、その時は河合塾爆弾男などとポスターにあったが、なるほど独立行政法人:大学入試センターとの暗黙の了解を破ったという点では『爆弾』であろう。ちなみに入試問題の校正依頼は東京大学も行っており、依頼先は言わずと知れた駿台予備校である。なるほど第3回東大入試実戦模試で出たのとまったく同じ問題が東大入試にそのまま出題された事実もこれである意味うなずけるのだが、河合塾と違うところはズバリ!!的中などとバカ騒ぎしないことである。(よく見ると早大教育や理工学部の数学にもズバリ!!的中があるのだが・・・)ましてやそれを宣伝に用いることもない。基礎基本に徹しつつ、正当に学問を積んでいけばズバリ!!的中なんぞに頼らずとも入試には合格できるのである。
河合塾から始まったこのズバリ!!的中も本質はパラグラフリーディングと同じ。ごまかされず、ましてや騙されず受験生諸君は基礎基本の徹底に勤しんでもらいたい。
ところで駿台の故伊藤和夫師に相当する方に代々木ゼミナールでもご活躍された元河合塾の古藤晃氏がいらっしゃる。明光義塾に買収されてしまったが、古藤氏のJR代々木駅至近の事務所を訪ねたことがあった。(信じてもらえないだろうが、先方から会いたいと来たのである)その頃は古藤氏はすでに第一線を退き、主に私立大学の入試問題作成代行をしていらっしゃったのだが、当然河合塾は古藤氏ともつながりがある。事務所で話した後「メシでも」ということになってドイツ料理をおごっていただいたことをはっきりと覚えているが、その席で(河合塾の)ズバリ!!的中について質問したら「いやあ、入試問題を当てるなんて簡単でしょう」と胡麻化して?おられた。
最後に入試問題の作られ方について早慶を例に解説しておこう。まず早稲田大学は全体自治。商学部・法学部から理工学部の英語教授が集まってミーティングをした後で締切期限を設定して問題を作り、作成後に提出。それから全体で「この問題はここ」「その問題はそこ」と各学部に割り当てられる。従って早稲田大学の場合は、例えば文学部専願志望者が政経学部の過去問を解くことに、まあ勧めはしないが多少なりとも意味がある。
対し慶応大学は独立自治。学部を超えた全体集合もなく、ましてや共通の締切もなく各学部バラバラに作る。従って文学部専願志望者が他学部の過去問を解く必要、かつメリットはないといえる。
私立総合大学はこの全体もしくは独立自治にいずれか。
最後の最後にもうひとつ。ズバリ!!的中なんぞに意味はないとはいえ、しかし出来ればズバリ!!的中とは言わないまでもそれに近い体験をしてみたい!受験を少しでも有利にしたい!という諸君もいるだろう。気持ちは分かる。ボクは浪人してるからね。(もっとも当時は「一浪当然、二浪ご苦労、三浪長老」なる言葉も実在した。意味は推して知るべし)そういう人のためにひとつ紹介しておく。Foreign Affairsなる雑誌がある。日本語で「外国諸事情」といったところか。ここから入試問題がけっこう(どころかジャンジャン)出題されている!!・・・というわけでこちらを読みこなせれば、ズバリ!!的中など求める必要もなくなるのだが・・・
※※大学高校入試は賭け事ではない⇒例えば競馬・競輪・競艇などと同じではない。ここまで的中にこだわるなら、中途半端なことをしてないでいっそのこと河合塾大井町競馬場校、同江戸川競艇場校などやってみてはどうか?ちなみにボクは競馬・競輪・競艇いずれも経験がある。いや経験あるどころか、微々たるものだが現段階ですべてクロであるが、それ以上に「おいしい思い」をしているいずれ本ブログでも触れようかな・・・