教室ブログ

2023.12.21

デリカシーなき受験英語

タイトルに受験英語とあるが、何故今回のテーマで書こうと思ったかというと、実はつい最近になって来年の大河ドラマが源氏物語ということを知ったからであるが、しかし何故来年2024年度の大河ドラマなのかはいまひとつ首をかしげるところがある。というのも今から15年前の「2008年が源氏物語の千年紀」であって、放送される来年は1016周年となってしまうからだ。中途半端だけど、ドラマが面白ければいいのかな?

その源氏物語の「若紫の巻」のエピソード。こちらは高校の教科書にも掲載されてたと思うが、主人公の天海祐希でなくて光源氏が「わらはやみ」なる熱病→恋でなく本物の病気にかかって北山のあるお寺→鞍馬寺?で祈祷してもらい治る。そして養生中に初恋の女性である義理の母親の藤壺に似た少女を見つけたのだが、それが若紫だった。マザコンかつロリコンの光源氏は若紫を宮中に連れて帰り、自分の理想の女性に育て上げようとする(のだが、これは平安時代かつ光源氏だったからこそ許されたことで、令和の現代なら明らかに犯罪である。)

ある日のこと、若紫が光源氏の所に来て

「雀の子をいぬきが逃しつる」

(飼っていた雀のひなを(召使の)いぬきが逃がしてしまった)

と泣きながら言ったのだが、それで光源氏は(なんて優しい少女だ!!)と大感動して若紫をますます好きになってしまうのだが、ここで問題。

「なぜ光源氏は若紫をますます好きになってしまったのか?」

 

正解は「倒置表現を使ったから」である。普通の少女なら「いぬきが雀の子を」と雀の子を逃がしてしまった主語の「いぬき」が先に来るはずなのに、若紫は「雀の子を」と目的語が先頭に来た⇒若紫にとってはだれが雀の子を逃がしてしまったのか、などということはまったく関係ない。ただただ自分が可愛がっていたヒナが逃げてしまった、そのことだけが悲しいんだと。若紫の純粋な気持ち⇒悲しさが倒置表現によりストレートに光源氏に伝わったからこそ彼は若紫をますます好きになってしまったのであるが、

これをふまえて受験英語の書換問題を考えてみよう。

例えば第4文型と第3文型の書換公式。クリスマスを意識して簡単な具体例を出すと、

She gave him a Christmas present.(第4) = She gave a Christmas present to him.(第3)

日本語訳はいずれも「彼女は彼にクリスマスプレゼントをあげました」と

日本の公立中学校や大多数の学習塾は教えているのだが、しかし英語には文末に新情報を置くという性質があり、正確には

She gave him a Christmas present.は「彼女が彼にあげたのはクリスマスプレゼントです」

(≒It was a Christmas present that She gave him.)となり、

She gave a Christmas present to him. は「彼女がクリスマスプレゼントをあげたのは彼です」

(≒It was him that she gave a Christmas present.)となる。

このようなデリカシーの欠如は他にも多数存在するが、日本語はもちろん英語もそれ以上に血の通った生きている言葉なのである。

源氏物語の若紫のエピソードが内容一致問題として出題され、倒置の部分を入れ替えて(←慶応大学はしばしばこの手を用いる)「いぬきが雀の子を逃がした」は〇かバツかといったら、内容的には〇でも若紫の心情的には絶対にバツである。「心動かす言葉」はじっくりと味わってこそ意味がある。ドラマではどうかな?

 

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