【2019 概観】
東大同様、
桜蔭の素材は毎年本当に素晴らしい。
今年度は、
「人間は他者との共生なしには
生きられず、
幸福は人間関係の中にあり、
行き過ぎた効率追求の心性を
見直すべきだ」、
「見送られる者の生き残った罪悪感、
見送る者がかける無意識の呪い、
全ての人を不幸にし、
人間らしさを奪う戦争という悪」、
という珠玉の2本立て。
評論文はやや難、20分。
小説は難、30分。
東大同様の圧倒的な記述量
(おそらく600字前後)、
東大なら70分程度かけられるものを、
桜蔭は50分で仕上げろと求めてくる。
特に今回の小説は、
共通テストを超える超長文。
じっくり読んでいたら
それだけで50分経つ。
濃淡をつけた読みが肝要。
評論文同様、
大事だと思う箇所に線を引いたり
キーワードを〇で囲ったり、と
とにかく手を動かすこと。
最後にその手を加えたところを
読みつなげれば、それがそのまま
本文の要約になることが、
ある意味では国語の学習の最終ゴール。
正しい箇所に
ペンを入れられるようになるためには、
演習を積み重ねるしかない、
「質量転化の法則」。
【2019】 やや難
<問三 内容説明> やや難
ポイント:
自分だけで使えない=他者との共生
人間はひとりでは生きてゆけず、
他者と関わり
他者から助けられることが
不可欠であり、
他者と時間を重ね合わせて生きるのが
人間という存在であるということ。
<問四 内容説明> やや難
ポイント:
それ=自分だけの時間を効率的に使う
人間は効率化の観点から時間を節約し、
その結果得られた
「自分だけの時間」を、
また同様に「効率化」の観点から
消費しようと考えてしまうということ。
<問五 理由説明> やや難
ポイント:
効率追求の∞地獄と他者性なき孤独
時間を効率化の観点のみから
捉えてしまうと
果てなき効率化追求の
悪循環に陥ってしまうし、
そもそも人間は
ひとりで時間を使うようには
出来ていないので、
自分だけの時間を
追求すればするほど
他者との関係性が希薄となり、
幸福を見出しづらくなってしまうから。
【2019】 やや難
<問二 心情説明> 標準
ポイント:こぶしがぶるぶる震えていた
特攻隊員の家庭事情も顧みず、
成績の良い者こそ真っ先に
特攻に行かせ戦死させてしまう、
自分の孫の命も奪った
血も涙もない軍に対する、
激しい憤りが押さえられない気持ち。
<問三 内容説明> 標準
ポイント:
あんな練習機=今にも止まりそう
乗組員の命の危険も顧みず、
今にも止まってしまいそうな飛行機を
使用せざるを得ないほど、
物資が枯渇し、戦況は悪化し、
極限まで追い込まれている状況。
<問四 心情説明> やや難
ポイント:
「死にたい」から「生きたい」へ
仲間たちのように
特攻隊として玉砕する使命を果たせず、
自分だけがのうのうと生き残って
しまったことに対する「罪悪感」から、
カミのやさしさに触れ、
人間らしい心を取り戻し、
むしろ「生きたい」と願う、
微かに希望と自尊心を
取り戻した心境への変化。
<問五 空欄補充> やや難
ポイント:
神格化された存在から血の通った人間へ
神さま
<問六 心情説明> やや難
ポイント:
もう死にに行かせない
自分も含め、
良かれと思って行っていた
「お国のために」という応援が、
実は呪いとして
特攻隊員たちをひどく苦しめて
いたのではと葛藤する気持ちから、
もう今後は彼らを死にには行かせない、
同じ心を持った人間として
「生きて欲しい」と願う決意への変化。