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2023.03.12

【東大現代文10年分講評ー9】2015年度

【2015-1】

池上哲司「傍らにあること」

 

 

<感想>

 

2014ー2023の10年間で、

2014の問二、2016の問二、

と並ぶ難問。

 

一読しただけで理解できる受験生は、

東大受験生レベルでも1/3程度では。

 

「自分を判断するのは他者、

しかし決定するのはあくまで自分」、

「死してなお後世に影響を

与えるような自己たるべく、

他者評価からの自由・逸脱を志向し

燃えて生きろ」という文章。

 

 

<(一) 理由説明 やや難>

ポイント:

不変の自己なんてそもそもいない

 

あるのは

「現在」に主成している自分のみで、

過去と現在を貫く

「不変・同一の自分」

などはそもそも存在しないから。

 

 

<(二) 理由説明 標準>

ポイント:

自分を判断するのは他者

 

過去を統合・回収する過程を通じ

生成される「自分らしさ」とは、

自分によってではなく、

他者によって

認められるものだから。

 

 

<(三) 内容説明 難>

ポイント:

他者が判断した自分らしさはすでに過去

 

「生成する働き・可能性」としての

「現在」の自分とは異なり、

他者により判断され認められる

「自分らしさ」は、すでに

「過去」のものであるということ。

 

 

<(四) 内容説明 やや難>

ポイント:

足跡の中にも働きはある

 

虚への志向性を追求した

濃密な人生を送った者は、

死してもなお、その足跡の中に

働き(その人生のダイナミズム)

が宿り、残された人はそれを

濃厚に感じられるということ。

 

 

<(五) 全体要旨 難>

ポイント:

<感想>参照

 

「自分らしさ」とは、

他者により判断されるが、

他者により決定されるものではなく、

現実化するのはあくまで自分だ。

他者の自身に対するイメージからの

自由・逸脱を志向する人生は、

死してもなお後世に、

その人生のダイナミズムを

追体験させることが出来る。

 

 

 

 

【2015ー2】

藤原新也

「ある風来猫の短い生涯について」

 

 

<感想>

 

前年度の地獄からずっと易しくなった。

しかし翌年度また難しくなる(苦笑)。

 

 

<(一) 内容説明 標準>

ポイント:

悠久=果てしなく続く

 

多産猫とその子猫たちの

子離れ・親離れの様子に、

人間の甘いそれにはない、

脈々と続く

厳しい野生の掟や本能を見出し、

筆者は感銘を受けたということ。

 

 

<(二) 内容説明 標準>

ポイント:

野生に介入してしまった

 

寿命を迎えていたであろう猫を、

ふとした罪悪感から助けてしまい、

猫が息を吹き返したのは、

結果として「野生の掟」を破る、

行き過ぎた介入であったということ。

 

 

<(三) 内容説明 標準>

ポイント:

2つの「それ」をしっかり説明する

 

私が猫を引き取ったのは、

無償の愛によるものではなく、

猫の病気が私にもたらした

「慈悲心」という

一種のエゴイズム

からであったということ。

 

 

<(四) 内容説明 標準>

ポイント:

面倒がかかる子ほど可愛い逆説

 

病気で悪臭を放つ厄介者の猫の死は、

一種の解放をもたらすはずなのに、

その欠陥があるからこそ、

むしろ私に哀惜の念を感じさせたが、

それは予想外の心情だったということ。

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