【2016-1】
内田樹「反知性主義者たちの肖像」
<感想>
例年ハズレなしの
東大現代文に於いても、
特に名文だった年。
「『無知の知』を忘れ、
他者の意見を
真摯に聞けない傲慢な者は、
いかに知性があろうと
反知性の烙印を押すべき」。
「知性とは集団的叡智であり、
周囲のパフォーマンスを
いかに高められるかで測られる」。
まさに「ノブレス・オブリージュ」、
教養とは他者の幸福のために培うもの。
人間は常に人間関係の中で生きるもの。
難易度は標準、前年と比べかなり易化。
時間は40分以内を目指したい。
<(一) 内容説明 標準>
ポイント:
「知性的な人」とはどんな人か
「無知の知」で傲慢に陥らず、
自説に拘泥することなく
他者の意見を虚心坦懐に聴け、
自分の知的枠組みを
常に刷新していけるような、
柔軟性を持った知性的な人。
<(二) 内容説明 標準>
ポイント:
「反知性的」な人とはどんな人か
自身の知性に対する
絶対的な自信と傲慢さから
理非の判断を自己完結させ、
決して他者に委ねたり
協同したりしようとしない
反知性的な人のこと。
<(三) 内容説明 標準>
ポイント:
シャットアウト、無視、存在価値なし
理非の判定に際し、
自分の考えは一切それに
影響を与えないと言われたら、
自分の存在価値を
否定されてしまうことと
同義であるということ。
<(四) 内容説明 標準>
ポイント:
知性とは集合的叡智
合意形成に於いて、
周囲の知性を活性化させたり、
周囲の他者に影響を及ぼすような、
真の意味での知性が持つダイナミズム。
<(五) 全体要旨 やや難>
ポイント:
<感想>参照
知性とは個人に属するものではなく、
集合的な現象(集合的叡智)である。
筆者は、
単に知的能力が高いかどうかではなく、
彼の属する集団全体の
知的パフォーマンスが
彼がいることで高まるか否かを、
彼を知性的/反知性的と判断する
尺度にしているということ。
【2016-2】
堀江敏幸「青空の中和のあとで」
<感想>
センター試験2007の傑作
「送り火」の堀江敏幸さん。
しかしその「送り火」と違って
ムズいしあんまり面白くない(涙)。
2014~2023の10年間で、
2014の第二問に次ぐ難易度。
特に(二)と(四)は、
東大をトップ合格する
レベルの受験生でないと、
完璧な解答は無理だろう。
「青空を急に引き裂く嵐」に、
「単調な日常の裏側に潜む暴力性」を、
「かりそめの日常は
常に非日常に転換しうる
可能性を秘め、
僕らはむしろ時にそれを
期待していること」を、
重ね合わせる、筆者の頭の中の話。
<(一) 理由説明 やや難>
ポイント:
予感が楽しい、予報を知らせてくれるな
非日常の予感として
雨を体感したいのに、
予報として雨が降ることを
事前に聞かされてしまうと、
その予感が縛られ日常化してしまい、
期待感が鈍ってしまうから。
<(二) 理由説明 難>
ポイント:
不思議=一般の認識とは違う
海の青は
手で掬ったとたん青を失い、
空の青は
青い光の散乱に過ぎないように、
青は、実は孤独で
幻のような色であるところ。
<(三) 内容説明 やや難>
ポイント:
単調な日常の裏側にあるもの
日常は、外から見ると
単調な繰り返しのように見えるが、
実は内側には、
日常を非日常に転換しうる、
暴発的なエネルギーが
潜んでいるということ。
<(四) 内容説明 難>
ポイント:
突然の赤い風船が思考を中断させた
青空とそれを突然引き裂く嵐に、
単調な毎日と
その裏側に潜む暴発的な力を
重ね合わせていた筆者の思考が、
突然の赤い風船という
「非日常」に破られたということ。