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2023.03.11

【東大現代文10年分講評ー8】2016年度

【2016-1】

内田樹「反知性主義者たちの肖像」

 

 

<感想>

 

例年ハズレなしの

東大現代文に於いても、

特に名文だった年。

 

「『無知の知』を忘れ、

他者の意見を

真摯に聞けない傲慢な者は、

いかに知性があろうと

反知性の烙印を押すべき」。

「知性とは集団的叡智であり、

周囲のパフォーマンスを

いかに高められるかで測られる」。

まさに「ノブレス・オブリージュ」、

教養とは他者の幸福のために培うもの。

人間は常に人間関係の中で生きるもの。

難易度は標準、前年と比べかなり易化。

時間は40分以内を目指したい。

 

 

<(一) 内容説明 標準>

ポイント:

「知性的な人」とはどんな人か

 

「無知の知」で傲慢に陥らず、

自説に拘泥することなく

他者の意見を虚心坦懐に聴け、

自分の知的枠組みを

常に刷新していけるような、

柔軟性を持った知性的な人。

 

 

<(二) 内容説明 標準>

ポイント:

「反知性的」な人とはどんな人か

 

自身の知性に対する

絶対的な自信と傲慢さから

理非の判断を自己完結させ、

決して他者に委ねたり

協同したりしようとしない

反知性的な人のこと。

 

 

<(三) 内容説明 標準>

ポイント:

シャットアウト、無視、存在価値なし

 

理非の判定に際し、

自分の考えは一切それに

影響を与えないと言われたら、

自分の存在価値を

否定されてしまうことと

同義であるということ。

 

 

<(四) 内容説明 標準>

ポイント:

知性とは集合的叡智

 

合意形成に於いて、

周囲の知性を活性化させたり、

周囲の他者に影響を及ぼすような、

真の意味での知性が持つダイナミズム。

 

 

<(五) 全体要旨 やや難>

ポイント:

<感想>参照

 

知性とは個人に属するものではなく、

集合的な現象(集合的叡智)である。

筆者は、

単に知的能力が高いかどうかではなく、

彼の属する集団全体の

知的パフォーマンスが

彼がいることで高まるか否かを、

彼を知性的/反知性的と判断する

尺度にしているということ。

 

 

 

 

【2016-2】

堀江敏幸「青空の中和のあとで」

 

 

<感想>

 

センター試験2007の傑作

「送り火」の堀江敏幸さん。

しかしその「送り火」と違って

ムズいしあんまり面白くない(涙)。

 

2014~2023の10年間で、

2014の第二問に次ぐ難易度。

特に(二)と(四)は、

東大をトップ合格する

レベルの受験生でないと、

完璧な解答は無理だろう。

 

「青空を急に引き裂く嵐」に、

「単調な日常の裏側に潜む暴力性」を、

「かりそめの日常は

常に非日常に転換しうる

可能性を秘め、

僕らはむしろ時にそれを

期待していること」を、

重ね合わせる、筆者の頭の中の話。

 

 

<(一) 理由説明 やや難>

ポイント:

予感が楽しい、予報を知らせてくれるな

 

非日常の予感として

雨を体感したいのに、

予報として雨が降ることを

事前に聞かされてしまうと、

その予感が縛られ日常化してしまい、

期待感が鈍ってしまうから。

 

 

<(二) 理由説明 難>

ポイント:

不思議=一般の認識とは違う

 

海の青は

手で掬ったとたん青を失い、

空の青は

青い光の散乱に過ぎないように、

青は、実は孤独で

幻のような色であるところ。

 

 

<(三) 内容説明 やや難>

ポイント:

単調な日常の裏側にあるもの

 

日常は、外から見ると

単調な繰り返しのように見えるが、

実は内側には、

日常を非日常に転換しうる、

暴発的なエネルギーが

潜んでいるということ。

 

 

<(四) 内容説明 難>

ポイント:

突然の赤い風船が思考を中断させた

 

青空とそれを突然引き裂く嵐に、

単調な毎日と

その裏側に潜む暴発的な力を

重ね合わせていた筆者の思考が、

突然の赤い風船という

「非日常」に破られたということ。

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