【2017ー1】
伊藤徹「芸術家たちの精神史」
<感想>
この年から設問が一問減った。
しかし難易度は前年度よりやや難化。
時間も、設問が一問減ったにも
関わらず、40分程度はかかるかしら。
論理展開にしっかり
ついてゆけていると感じる場合は、
ある程度前後を読めば、
もう都度設問を解いても構わない。
しかしたとえば今回の文章のように、
やや難しいと感じる場合は、
無理をせず本文を最後まで読み切ろう。
二度三度読むと、
きっとだんだんと解ってくる。
「怪物のような技術が
止まることない進化を続け、
ついには神話まで打ち砕き、
人間には拠るべく虚構(良い意味)が
なくなってしまった、
アイデンティティ・クライシス」
というお話。
何度も何度も言っているが、
東大現代文は
本当に示唆的で珠玉の名文揃い。
<(一) 内容説明 標準>
ポイント:
制御不能な怪物テクノロジー
技術が新問題を生み
それがまた新技術を生む、
人間の産物でありながら
人間が制御不能な、
終わりなき進化を続ける科学技術は
魔物のようであるということ。
<(二) 内容説明 やや難>
ポイント:
技術は常に人間に倫理的判断を迫る
技術は
「できること」の世界に属し、
「すべきこと」の世界から
離れているので、
常に人間に
行為者としての決断を要求し、
価値中立的な道具には
留まりえないということ。
<(三) 理由説明 やや難>
ポイント:
あらゆる理論は底が抜けていて無効
例えば「個人の自由」と言う時、
そもそも確固たる
「個人」の存在が疑われるように、
諸問題の是非を判断する為の
いかなる理論も、底が抜けた
想像の産物であるということ。
<(四) 全体要旨 やや難>
ポイント:
<感想>参照
技術は不気味な怪物の如く進化を続け、
人間の拠り所たるあらゆる論理を砕き、
それが虚構であると気付かなかった
最後の砦たる「神話」をも壊した。
故に人間は実存の危機に瀕し、
技術は人間に、
新たな虚構(論理や神話)の構築を
迫るようになったということ。
【2017-2】
幸田文「藤」
<感想>
尾崎紅葉と並ぶ明治の大文豪・
幸田露伴のはねっかえり娘・
文さんの文章は入試によく出る。
例年と比べるとやや易化したが、
それでもまだまだ難しい。
しかしこれまた例年通りよい文章。
「草花と触れあう時間の至福、
そしてそれを親が子に導く大切さ、
現代の親子はちゃんと
自然と交感・交歓してますか?」
という文章。
30分以上はかけたくない。
<(一) 内容説明 標準>
ポイント:
父が草花へ積極的に導いてくれた
父が私に、
木を与えてくれたり、
その管理を任せてくれたり、
木や葉のあてっこあそびを
してくれたりと、
木や草により親しめるような配慮を
積極的にしてくれたということ。
<(二) 内容説明 標準>
ポイント:
「やきもち」と「孤独」
聡明な姉のほうが父に可愛がられ、
いつも父に連れだってもらえるのは
姉のほうであること
に対するやきもちと、
いつも私が
置去りにされることへの悲しさ。
<(三) 理由説明 やや難>
ポイント:
花の個性に気付く、他の遊びと違う興奮
父の言うとおりに
様々な草花と実際に接する中で、
それぞれの花の個性を発見し、
それが私に、他の遊びでは
味わい得ない興奮を誘ったから。
<(四) 内容説明 やや難>
ポイント:
太陽・藤・虹・水で飽和=満ち足りる
太陽とふじの花と虹と水、
それらが奏でる音以外は沈黙、
そんな夢のような贅沢な時間と空間に
父とふたりあることに、
至福を感じた。