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2023.03.10

【東大現代文10年分講評ー7】2017年度

【2017ー1】

伊藤徹「芸術家たちの精神史」

 

 

<感想>

 

この年から設問が一問減った。

しかし難易度は前年度よりやや難化。

時間も、設問が一問減ったにも

関わらず、40分程度はかかるかしら。

 

論理展開にしっかり

ついてゆけていると感じる場合は、

ある程度前後を読めば、

もう都度設問を解いても構わない。

しかしたとえば今回の文章のように、

やや難しいと感じる場合は、

無理をせず本文を最後まで読み切ろう。

二度三度読むと、

きっとだんだんと解ってくる。

「怪物のような技術が

止まることない進化を続け、

ついには神話まで打ち砕き、

人間には拠るべく虚構(良い意味)が

なくなってしまった、

アイデンティティ・クライシス」

というお話。

 

何度も何度も言っているが、

東大現代文は

本当に示唆的で珠玉の名文揃い。

 

 

<(一) 内容説明 標準>

ポイント:

制御不能な怪物テクノロジー

 

技術が新問題を生み

それがまた新技術を生む、

人間の産物でありながら

人間が制御不能な、

終わりなき進化を続ける科学技術は

魔物のようであるということ。

 

 

<(二) 内容説明 やや難>

ポイント:

技術は常に人間に倫理的判断を迫る

 

技術は

「できること」の世界に属し、

「すべきこと」の世界から

離れているので、

常に人間に

行為者としての決断を要求し、

価値中立的な道具には

留まりえないということ。

 

 

<(三) 理由説明 やや難>

ポイント:

あらゆる理論は底が抜けていて無効

 

例えば「個人の自由」と言う時、

そもそも確固たる

「個人」の存在が疑われるように、

諸問題の是非を判断する為の

いかなる理論も、底が抜けた

想像の産物であるということ。

 

 

<(四) 全体要旨 やや難>

ポイント:

<感想>参照

 

技術は不気味な怪物の如く進化を続け、

人間の拠り所たるあらゆる論理を砕き、

それが虚構であると気付かなかった

最後の砦たる「神話」をも壊した。

故に人間は実存の危機に瀕し、

技術は人間に、

新たな虚構(論理や神話)の構築を

迫るようになったということ。

 

 

 

【2017-2】

幸田文「藤」

 

 

<感想>

 

尾崎紅葉と並ぶ明治の大文豪・

幸田露伴のはねっかえり娘・

文さんの文章は入試によく出る。

 

例年と比べるとやや易化したが、

それでもまだまだ難しい。

しかしこれまた例年通りよい文章。

 

「草花と触れあう時間の至福、

そしてそれを親が子に導く大切さ、

現代の親子はちゃんと

自然と交感・交歓してますか?」

という文章。

 

30分以上はかけたくない。

 

 

<(一) 内容説明 標準>

ポイント:

父が草花へ積極的に導いてくれた

 

父が私に、

木を与えてくれたり、

その管理を任せてくれたり、

木や葉のあてっこあそびを

してくれたりと、

木や草により親しめるような配慮を

積極的にしてくれたということ。

 

 

<(二) 内容説明 標準>

ポイント:

「やきもち」と「孤独」

 

聡明な姉のほうが父に可愛がられ、

いつも父に連れだってもらえるのは

姉のほうであること

に対するやきもちと、

いつも私が

置去りにされることへの悲しさ。

 

 

<(三) 理由説明 やや難>

ポイント:

花の個性に気付く、他の遊びと違う興奮

 

父の言うとおりに

様々な草花と実際に接する中で、

それぞれの花の個性を発見し、

それが私に、他の遊びでは

味わい得ない興奮を誘ったから。

 

 

<(四) 内容説明 やや難>

ポイント:

太陽・藤・虹・水で飽和=満ち足りる

 

 

太陽とふじの花と虹と水、

それらが奏でる音以外は沈黙、

そんな夢のような贅沢な時間と空間に

父とふたりあることに、

至福を感じた。

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