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2023.03.08

【東大現代文10年分講評ー5】2019年度

【2019-1】

中屋敷均「科学と非科学のはざまで」

 

 

<感想>

 

標準レベル。35分程度で仕上げたい。

論旨は非常に明快。

仏教の「中道」や、

アリストテレスの「中庸」にも繋がる。

世界は白か黒かではない。

秩序と無秩序のはざま、

科学と非科学のはざまの、

「グレーゾーン」にこそ、

人間の叡智も幸福も宿る。

 

 

<(一) 内容説明 標準>

ポイント:

世界は無秩序なのに生物は有秩序

 

エントロピー増大の法則(無秩序)

が支配する自然界に於いて、

有機物である生物が、

秩序ある「形あるもの」として

存在することは、

極めて特殊なことであるということ。

 

 

<(二) 内容説明 標準>

ポイント:

秩序と無秩序の往還

 

生命の営みとは、

偶発的な要素に反応し

複雑化しながら、

自己複製と変異、

秩序と無秩序を往還する、

極めて特殊で

多様性に富んだもので

あるということ。

 

 

<(三) 内容説明 標準>

ポイント:

福音=喜ばしい知らせ

 

科学が進歩し、

新たな秩序やシステムが

次々と構築されていく中で、

人々が不安や混乱から解放され、

人類全体の幸福度が高まることは、

喜ばしいことであるということ。

 

 

<(四) 内容説明 やや難>

ポイント:

「カオスの縁」にある豊饒な可能性

 

科学がその役割を終え、

全てが完璧な秩序で貫かれた世界は、

ユートピアでは決してない。

秩序と無秩序、科学と非科学の

はざまである「カオスの縁」こそ、

人間の知性や決断に意味が生まれる、

多様性と可能性に満ちた

世界であるということ。

 

 

 

 

【2019ー2】

是枝裕和「ヌガー」

 

<感想>

例年より特に短い。

例年より易しい。

力がある受験生なら20分程度で

仕上げることが出来るだろう。

「少年から大人へ、

その通過儀礼としての迷い子経験」、

素晴らしい文章、

流石東大、流石名映画監督。

 

 

<(一) 内容説明 標準>

ポイント:

僕の不安と周囲の無関心のコントラスト

 

僕は迷い子になってただでさえ

不安と恐怖の只中にいるのに、

周囲の乗客たちは

僕に何の関心も示さず

何の助けにもならず、

僕の不安と恐怖はますます

大きくなったということ。

 

 

<(二) 理由説明 標準>

ポイント:

菓子の甘さ⇒母の甘さ

 

駅員からもらった菓子をほおばり、

今度はそれを

母に買ってもらおうと思い、

大好きな母を思い出し近くに感じ、

恐怖と孤独が少し和らぎ

安堵したから。

 

 

<(三) 内容説明 標準>

ポイント:

邂逅=めぐりあい

 

母の庇護の中に抱かれていた少年が

そこから引き離され、

自分を知らない、自分に無関心な

残酷な「世界」と

予告なく直面させられ、

その孤独に恐怖するということ。

 

 

<(四) 理由説明 やや難>

ポイント:

母の喪失と孤独、少年から大人へ

 

大人になってしまった自分の元には、

かつて無条件に自分を庇護してくれた

絶対的な母の存在はもうなく、

これからはその孤独と

独りで向き合わねばならないことを

悟るから。

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