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2023.03.07

【東大現代文10年分講評ー4】2020年度

【2020ー1】

小坂井敏晶「神の亡霊」

 

 

<感想>

 

一般受験生レベルだと難。

東大受験生レベルだと標準。

35~40分程度で仕上げたい。

 

テーマはよく耳にする「自己責任論」。

筆者の論理展開も明快。

そして筆者と東大の主張はもちろん

「さよなら自己責任」。

 

 

<(一) 理由説明 やや難>

ポイント:

米国では格差の責任は社会でなく個人

 

機会均等・自由競争の米国社会では、

弱肉強食のルールが正当化され、

格差の責任は

社会でなく個人に帰せられるため、

平等を追求する動きは育ちにくいから。

 

 

<(二) 理由説明 標準>

ポイント:

聖域たる個人はありえず自己責任もない

 

自己責任論者は、

個人の行為の根拠を

才能や人格という「内部」に求めるが、

それらは偶然も含む

「外部」の産物に過ぎず、

全ての行為責任を

個人に帰すことは出来ないから。

 

 

<(三) 内容説明 やや難>

ポイント:

機会均等の仮面を被った能力主義の欺瞞

 

「能力主義」が「機会均等」を建前に

その真の姿を隠し、

被支配者をその合意の上で支配し、

かえって既存の階級構造を

固定化してしまうという矛盾のこと。

 

 

<四 全体要旨 難>

ポイント:

自由・平等は格差正当化のための煙幕

 

平等が異常であった封建時代と異なり、

近代は「自由」「平等」を理想とした。

しかしそれらは建前で、

「格差(不自由・不平等)」は

必要悪として厳然と存在する。

社会は格差を正当化するためにこそ、

「能力主義」「自己責任」を

人々に喧伝するのだということ。

 

 

 

 

【2020ー2】

谷川俊太郎「詩を考える」

 

 

<感想>

 

やや難。(三)は難。

30~35分程度で仕上げたい。

 

作品を作るとき、

作者は同じ言語を話す

多くの同胞の他者と繋がっている、

という、

流石谷川俊太郎、流石東大の

素晴らしい文章。

 

 

<(一) 理由説明 標準>

ポイント:

作品を創る時、私は無名

 

作品を創る時、

私は日本語を話す民族の総体を

自己に取り込み、

超越者に向かって開かれている

媒介者であって、

無名であることが許されるから。

 

 

<(二) 内容説明 標準>

ポイント:

創作時の言語共同体との根源的な繋がり

 

作品を創るとき、

私と私のオリジナリティは、

日本語という

言語共同体に根差しており、

私はそこから

多くのインスピレーションを

受けているということ。

 

 

<(三) 内容説明 難>

ポイント:

作品は作者と不可分なものとして成立

 

作者は創作者であると同時に、

特定の時代・社会の一員である

俗人・読者でもあるので、

作品は作者と不可分なものとして

成立するのだということ。

 

 

<(四) 理由説明 やや難>

ポイント:

文章は意図的に他者と繋がる必要性あり

 

作品を書くときは、

作者は根源的に他者と繋がるが、

文章を書くときは、

意図的に他者と繋がる必要が生じる為、

私の独創性は

脆弱にならざるを得ないから。

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