【2022-1】
鵜飼哲「ナショナリズム、
その<彼方>への隘路」
<感想>
またも素晴らしい文章。
東大は常に
受験生の固定観念を揺さぶってくる。
今回は「ナショナリズムは幻想」。
難易度としては、
取り組み易かった前年度(2021)
よりさらにやや易化した印象。
力ある受験生なら、
30分程度で仕上げられるだろう。
東大受験生は、
論理のルール(同値・対比・因果)を
身に着けるのは同然ながら、
「ことばはチカラだ!」(河合)
などで語彙力を、
「読むだけ小論文」(学研)
などで現代社会の広く浅くの論点を、
押さえておくことは必須だろう。
そして自分を凡人だと思うなら、
「入試現代文へのアクセス」(河合)
などで、受験までに最低でも
100文章は読解演習を重ねたい。
「質量転化の法則」だ。
<(一) 内容説明 標準>
ポイント:
日本人の国内外での典型的心性
日本人は
国内では互いに分断されていても、
いざ国外に出れば
一致団結するはずだ、
という作者の甘い考えこそが、
まさに日本人のメンタリティの
典型だということ。
<(二) 内容説明 標準>
ポイント:
日本に再び吹き荒れる分断と国家主義
ナショナリズムは、
国内外に敵を作り、
人々を排除・切断・除去するが、
日本は現在、
急速に分断が進んでおり、
再びそのナショナリズムが
猛威を振るいつつあるということ。
<(三) 内容説明 標準>
ポイント:
宇宙から地球を見たら国境線なんてない
ありのままの自然としての地球には
国境線や国名などなく、
それらはあくまで
人為的・恣意的に仮構されたものに
過ぎないということ。
<(四) 全体要旨 標準>
ポイント;
ナショナリズムも日本人としての
アイデンティティも自明ではない
ナショナリズムが主張する
「生まれ」の「同一性」の
「自然的性格」は仮構だ。
そしてその「自然化」は、
「人為的」な操作を伴うため、
常に逆流(非自然化)が起こり得る。
つまり日本人という
アイデンティティの自明性さえ、
常に脅かされうるということ。
【2022-2】
武満徹「影絵の鏡」
<感想>
「人間はどこに行きつくのか」、
「人間は絶えず宇宙に抱かれている」。
第一問は現代社会の最先端と論理、
第四問は普遍的な人間存在の不思議。
東大現代文のテーマは
毎年本当に素晴らしい。
現代の諸問題を考察したければ、
人間存在を探求したければ、
東大の現代文を読んで考えよう。
全体的には前年比同様、やや難。
しかし25分程度で仕上げたい。
<(一) 内容説明 やや難>
ポイント:
意識を超えた意識を感じ思考停止に
巨大な火口を見た私の意識は、
意識それ自体を
超えた大いなるものに囚われ、
私の一切の思考は働くことを
拒まれてしまったから。
<(二) 内容説明 難>
ポイント:
「ちょっと振動をあたえただけ」
ケージの「バカラシイ」という言葉は、
私たちに考えの否定や変更を
迫るものではなく、
私たちの思考を再確認させ、
私たちの気持ちをほぐしてくれる
ものであったということ。
<(三) 内容説明 標準>
ポイント:
未知の領域を自身の音楽理論へ取り込む
フランスの音楽家たちは、
自分たちにとって未知の領域である
ガムランの演奏に感銘を受け、
自身の音楽表現理論へ熱心に
取り込もうとしたということ。
<(四) 内容説明 やや難>
ポイント:
老人はバカらしいがバカらしくない
何も映らない老人の影絵は
一見バカラシイが、
私は巨大な火口を見た時と同様、
意識の彼方からやってくる
「言い知れぬ力」
(=宇宙からのメッセージ)を
感じたということ。