【2023ー1】
吉田憲司「仮面と身体」
<感想>
僕は2001年度ぶんから
ずっと東大現代文を解いていますが、
年々着実に易化してるように思います。
一般受験生レベルでもやや難、
東大受験生レベルならやや易、
といった印象です。
時間もかつての第一問なら
45分くらい必要なものありましたが、
近年のレベルなら、
力のある受験生なら
35分程度で完答出来ると思います。
ここ最近、第一問は、
「ナショナリズム」
「自己責任」「介護」など、
「現代社会の諸問題」が
テーマでしたが、
今回は、
「仮面は不可視の異界と自身の顔を
かりそめに可視化し、
自身が他者と世界との新たな関係性を
構築するための装置である」という、
「民俗学」的なテーマでした。
<(一) 内容説明 標準>
ポイント:
仮面の探求と人間存在の探求の共通点
仮面には随所に、
地域や民族の違いを超えた
人類の普遍的な思考や行動のあり方が
表れているので、
仮面の探求をすることは、
人間存在の根源性の探求にも
繋がるということ。
<(二) 内容説明 標準>
ポイント:
仮面は「憑依」がなくても存立し得る
仮面は、
憑依という宗教的体験を想定しない
「神事を脱し芸能化した仮面」や
「子供たちの仮面」
の存在に代表されるように、
憑依という信念がなくても
存立し得るということ。
<(三) 内容説明 標準>
ポイント:
仮面は他者との新たな関係創出の装置
不可視で不可知
かつ千変万化する自身の顔に、
可視で可知
かつ固定化された仮面をつけることが、
自身と他者との新たな関係性を構築する
契機になるいうこと。
<(四) 全体要旨 やや難>
ポイント:
「感想」に書いた要旨のとおり
仮面とは、
不可視・不可知な
「異界」と「自分の顔」を
意図的・かりそめに
可視化・可知化し、
自身のコントロール下に
置くための装置である。
そうすることで、
自己と他者との新たな境界が生まれ、
他者(世界)との新たな関係性が
創出されるということ。
【2023ー2】
長田弘「詩人であること」
<感想>
第一問と違って第四問は、
ここ20年ずっと難しいです(苦笑)。
それでもかつてよりは少しマシです。
第一問は、
傍線部が来るたびに、
その前後のみで解答が可能そうなら
解答してしまって構いませんが、
第四問は、
第一問ほど論理が明快ではない上に
文章も短いため、
無理をせず、問題を解き始めるのは
全文を一度読み通してからに
することをお勧めします。
「言葉の差異に敏感たれ」
「言葉を通じ他者と自己に出会う」
またまた素晴らしい文章で、
東大現代文にハズレなしです。
<(一) 内容説明 やや難>
ポイント:
錠剤=飲みやすいが中身が見えない
平和や文化という言葉は、
具体性を欠き曖昧なままで
人々に安易に受け入れられてしまう、
抽象的なイメージが先行する言葉の
典型例であるということ。
<(二) 内容説明 やや難>
ポイント:
錠剤のように安易に言葉を飲み込むな
言葉に安易に
くみしてしまうのではなく、
言葉としっかり対峙し、
強固な関係性を構築できるような、
確固たる自己を持つこと。
<(三) 内容説明 やや難>
ポイント:
合言葉=身内だけの独善的な言葉
全体で共有される言葉を装いつつも、
実は差異に敏感足りえず分断を誘う、
身内だけに通じる独善的な言葉で、
思考してしまっているということ。
<(四) 内容説明 標準>
ポイント:
「感想」参照
人間は、自律した個として、
言葉を通じ他者と出会い、
他者との差異
(何を共有していないか)に気付き、
同時に不可避的に自身の限界とも
向き合うことになるということ。