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2023.03.04

【東大現代文10年分講評ー1】2023年度

【2023ー1】

吉田憲司「仮面と身体」

 

 

<感想>

 

僕は2001年度ぶんから

ずっと東大現代文を解いていますが、

年々着実に易化してるように思います。

一般受験生レベルでもやや難、

東大受験生レベルならやや易、

といった印象です。

時間もかつての第一問なら

45分くらい必要なものありましたが、

近年のレベルなら、

力のある受験生なら

35分程度で完答出来ると思います。

 

ここ最近、第一問は、

「ナショナリズム」

「自己責任」「介護」など、

「現代社会の諸問題」が

テーマでしたが、

今回は、

「仮面は不可視の異界と自身の顔を

かりそめに可視化し、

自身が他者と世界との新たな関係性を

構築するための装置である」という、

「民俗学」的なテーマでした。

 

 

<(一) 内容説明 標準>

ポイント:

仮面の探求と人間存在の探求の共通点

 

仮面には随所に、

地域や民族の違いを超えた

人類の普遍的な思考や行動のあり方が

表れているので、

仮面の探求をすることは、

人間存在の根源性の探求にも

繋がるということ。

 

 

<(二) 内容説明 標準>

ポイント:

仮面は「憑依」がなくても存立し得る

 

仮面は、

憑依という宗教的体験を想定しない

「神事を脱し芸能化した仮面」や

「子供たちの仮面」

の存在に代表されるように、

憑依という信念がなくても

存立し得るということ。

 

 

<(三) 内容説明 標準>

ポイント:

仮面は他者との新たな関係創出の装置

 

不可視で不可知

かつ千変万化する自身の顔に、

可視で可知

かつ固定化された仮面をつけることが、

自身と他者との新たな関係性を構築する

契機になるいうこと。

 

 

<(四) 全体要旨 やや難>

ポイント:

「感想」に書いた要旨のとおり

 

仮面とは、

不可視・不可知な

「異界」と「自分の顔」を

意図的・かりそめに

可視化・可知化し、

自身のコントロール下に

置くための装置である。

そうすることで、

自己と他者との新たな境界が生まれ、

他者(世界)との新たな関係性が

創出されるということ。

 

 

 

 

【2023ー2】

長田弘「詩人であること」

 

 

<感想>

 

第一問と違って第四問は、

ここ20年ずっと難しいです(苦笑)。

それでもかつてよりは少しマシです。

 

第一問は、

傍線部が来るたびに、

その前後のみで解答が可能そうなら

解答してしまって構いませんが、

第四問は、

第一問ほど論理が明快ではない上に

文章も短いため、

無理をせず、問題を解き始めるのは

全文を一度読み通してからに

することをお勧めします。

 

「言葉の差異に敏感たれ」

「言葉を通じ他者と自己に出会う」

またまた素晴らしい文章で、

東大現代文にハズレなしです。

 

 

<(一) 内容説明 やや難>

ポイント:

錠剤=飲みやすいが中身が見えない

 

平和や文化という言葉は、

具体性を欠き曖昧なままで

人々に安易に受け入れられてしまう、

抽象的なイメージが先行する言葉の

典型例であるということ。

 

 

<(二) 内容説明 やや難>

ポイント:

錠剤のように安易に言葉を飲み込むな

 

言葉に安易に

くみしてしまうのではなく、

言葉としっかり対峙し、

強固な関係性を構築できるような、

確固たる自己を持つこと。

 

 

<(三) 内容説明 やや難>

ポイント:

合言葉=身内だけの独善的な言葉

 

全体で共有される言葉を装いつつも、

実は差異に敏感足りえず分断を誘う、

身内だけに通じる独善的な言葉で、

思考してしまっているということ。

 

 

<(四) 内容説明 標準>

ポイント:

「感想」参照

 

人間は、自律した個として、

言葉を通じ他者と出会い、

他者との差異

(何を共有していないか)に気付き、

同時に不可避的に自身の限界とも

向き合うことになるということ。

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