教室ブログ
【２０２３年 小説】
【梅崎春生『飢えの季節』】
【全体講評】
やや難。２５分。
センター試験時代から大好きな
戦中戦後の物語。
タイトルがスゴい
「Season Of Hunger」。
評論文同様、選択肢が紛らわしく、
前年度より難化した印象を受ける。
特に問３・問５・問６。
前年度は評論文・小説ともに
短時間で満点が狙えたが、
今年度は時間もかかる上、
力ある受験生でも、
それぞれ１～２問の失点は覚悟か。
語句の意味を問う問題は
前年度に引き続き消滅。
珍しく傍線部問題が６問、
Fまであった。
さいごにまとめ問題として
別素材を示し、
本文と比較検討させる問題は
評論文・小説とも定着か。
【本文要旨】
戦後になっても
戦中と変わらない飢え。
私は広告会社に勤めるサラリーマン。
理想に燃えて作った
「食物都市」企画は
会社にあっさり却下された。
私は常に飢えていた。
乞食の老爺に迫られても、
「助けてあげたくても
助けてあげられない」
苦しさから邪険にしてしまった。
あらためて
自分の日常（飢えの只中）、
自分を囲む構図（富める者もいる）
を思うと、どんな恐ろしい未来が
待っているのかと身震いしてしまう。
１日３円の薄給であることが判明、
私は退職を決意した。
水のように静かな怒りで、
「食っていけないから」と、
課長には淡々と辞意を伝えた。
しかし、今の会社では
人並みの暮らしは絶望的である、
ということがあらためてはっきりし、
新しい生活を始めるしかないと思えば、
かえって勇気が湧いてきた。
「私の継続する飢えの象徴」のような、
かなしくそそり立つ「焼けビル」
（戦災で焼け残った私の勤め先）に、
私は別れを告げた。
【設問解説】
＜１＞ 心情説明。標準。
「良かれと思ったのに怒られ焦る」。
①が正解。
②は「認められようと張り切って」
が×。
③は「自分の未熟さにあきれつつ」
が×。未熟さが解ったのはこのあと。
④は「見誤っていたことに気付き」
が×。理由は③と同様。
⑤は「テーマとの関連不足」が×。
＜２＞ 心情説明。標準。
「現実を見ずお花畑な提案をした
自分自身に腹立たしい」。
①は「自らの欲望を優先させた」が×。
②は「会社が戦後に方向転換」が×。
むしろ逆で会社は旧態依然。
③は「戦後に営利を追求するように
なった会社」が×。
④は「戦後の復興を担う会社」が×。
⑤が正解。
＜３＞ 心情説明。やや難。
「じいさんに対する直接の怒り」
ではなく、
「助けてあげたいが助けられない、
どうしようもない苦しさ」。
①・③・④はじいさんに
怒ってしまっているから×。
②は紛らわくて難しいが、
「苦痛」「彼から逃げたい」
というキーワードがある
⑤が相対的判断からより適切。
＜４＞ 心情説明。標準。
「富める人もいる中、
私はなお飢えの只中、
不安でしかない将来」。
①が正解。
②は「現実を直視できない」が×。
むしろ現実を直視しているから
身震いした。
③は「不器用な生き方」が×。
④は「会社に勤めて２０日経っても」
が×。
⑤は「社会の動向を広く認識」が×。
＜５＞ 心情説明。やや難。
「水のような静かな怒り」
のニュアンスから、ズバリ正解は①。
②は「感情的に反論」がむしろ逆で×。
③も「ぞんざい」が「投げやり・粗略」
の意味なのでむしろ逆。
④は「ぶっきらぼうに」が×。
私の怒りには、
静かな怒りが込められている。
⑤は「負け惜しみのような」が×。
＜６＞ 心情問題。やや難。
「もう今の会社で人並みの暮らしは
絶望、だからこそやるっきゃない」。
①は「薄給では食べていけないことを
主張」出来たから
「勇気が出た」のではなく、
「絶望して開き直れたから」
勇気が出た。
②は「自分がすべきことを
イメージできるようになり」が×。
③は「物乞いをしてでも生きていこう」
が×。
④が正解。
⑤は「少し気楽になっている」が×。
＜７（i）＞ まとめ問題。標準。
①は「軍事的圧力」が×。
②は「倹約の精神」が×。
③が正解。
④は「国家貢献を重視する方針」
が×。
＜７（ⅱ）＞ まとめ問題。標準。
「かなしくそり立っていた」
のニュアンスよりズバリ②が正解。
