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2023.03.02

【共通テスト現代文10年分講評ー19】2023年①

【2023年 評論文】

【柏木博『視覚の生命力』】

【呉谷充利

『ル・コルビュジエと近代絵画』】

 

 

【全体講評】

 

やや難。30分。

 

2つの文章が示され、

それらの共通点・相違点を

問われる形式が定着した。

複数の意味を持つ漢字の

「文脈上の意味」を問う問題も

前年度に続きまた出題された。

 

「窓・壁・建築」と、

受験生にとってあまり馴染みのない

テーマで、前年比やや難化。

特に問4・問5・問6は

選択肢が紛らわしい。

来年度は易しくなるだろう。

 

 

【本文要旨】

 

<文章Ⅰ>

「正岡子規」の書斎には

「ガラス障子」があった。

病気で寝たきりだった子規は、

そこから多様な景色を見ることで、

自身の存在を確認することが出来た。

子規のガラス障子は、

「視界を制限」し、

外界(三次元)を平面(二次元)

に変える「スクリーン」であり

「フレーム」である

「視覚装置」であった。

「ル・コルビュジエの窓」は、

「視覚装置」である点では

「子規のガラス障子」と同じだ。

しかしそれは子規のそれと比べ、

換気より「視覚」を重視し、

あえて視界を

「限定・選別」することで、

かえって景色の広がりが

認識できるようになることに

その特徴と効果がある、

より意図的なフレームだ。

 

<文章Ⅱ>

周囲を壁で囲い、

開口部(窓)を設けることで、

壁が風景を切り取り、

視界が固定される(「動かぬ視点」)

=風景の観照の空間的構造化。

そうすると住宅は沈思黙考の場

(内面的世界の場)になる。

 

 

【設問解説】

 

<1> 漢字の書きと意味。標準。

アは①、エは③、オは②、

イは④、ウは③。

「感冒」「琴線」がやや難。

 

<2> 内容説明。標準。

①は「現状を忘れるため」が×。

②は「外界の出来事」、

「自己の救済」が△。

「出来事」というより「景色」。

「自己の救済」

というより「自身の確認」。

③が正解。

④は「外の世界への想像」

が本文からは読み取れず×。

⑤は「作風に転機」

が本文からは読み取れず×。

 

<3> 理由説明。標準。

①は「見る楽しみを喚起」が×。

②が正解。

③は「切り離したり接続したり」が×。

④は「新たな風景の解釈を可能にする」

が×。

⑤は「絵画に見立てる」がギャグで×。

「視覚装置」の内容はやや難だが、

選択肢に紛らわしいものがなく、

消去法でも解ける。

 

<4> 内容説明。やや難。

現代文が大好きな「逆説」問題。

「視界を限定しかえって視界が広がる」

の、ズバリ⑤が正解。

①は「外界に焦点を合わせる

カメラの役割」がもっともらしいが

本文になく×。

②は「居住性を向上させる」が×。

③は「アスペクト比の変更を目的」

が×。「目的」ではなく「結果」。

④は明確な誤りはないが、

肝心かなめの「逆説」がなく×。

 

<5> 内容説明。やや難。

「住宅は沈思黙考の場」の

言葉のニュアンスから

すでに③か⑤に絞られる。

⑤の「制約」③と「限定」、

⑤の「自己省察」と

③の「思索をめぐらす」、

の相対的判断で③が正解。

が、これは難しい問題だった。

 

<6(i)> まとめ問題。標準。

消去法で解く。

①は「壁の圧迫感」が×。

②は「どの方向を遮るか」が×。

③は「窓の外に広がる圧倒的な景色」

が×。そんな風景の話ではない。

④が正解。

 

<6(ⅱ)> まとめ問題。標準。

消去法で解く。

①は「現代の窓に影響を与えた」が×。

②が正解。

③が「子規の芸術に影響を及ぼした」

が×。

④は「住み心地の追究」が×。

 

<6(ⅲ)> まとめ問題。標準。

消去法で解く。

この設問が共通テストを象徴する問題。

「ⅡとⅠを関連づけて」がポイント。

④は誤りはないが

「ⅠとⅡを関連付けていない」から×。

①は「宗教建築として」がギャグで×。

②は「光の溢れる世界を獲得」が×。

むしろ逆で

「光が疎んじられる世界」

=「沈思黙考の世界」がテーマ。

③が正解。

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