【2022年 小説】
【黒井千次『庭の男』】
【全体講評】
やや難。25分。
評論文に続き、
こちらも新傾向がチラホラ。
まず、「語句の意味」問題が消滅。
そしてまさかの
俳句との関連問題で
多くの俳句アレルギーの受験生を
絶望に叩き落とした。
「庭の男」のストーリー自体も
ナゾで不気味で、
多くの受験生はさほど面白味を
感じなかったのではないか。
難易度としては、
こちらも前年度比でやや難化の印象。
【本文要旨】
「案山子立つれば群雀空にしずまらず」
(遠くにいる案山子に怯える雀の群れ)
…このような感じで、
隣家の庭に立つ看板の「ナゾの男」
に対し戦々恐々だった私だが、
いざ実際にそばに近付いてみると、
「某は案山子にて候雀殿」
(案山子が雀に対し虚勢を張っている)
…このような感じで、
ぐじぐじ悩んでいた自分は滑稽だった、
という、前年度に続き落語みたいな話。
看板の「持ち主」である隣家の少年に、
キョドりながらも看板撤去を直談判し、
無下に断られ逆ギレし、
口悪く「あのガキ」と少年を罵る、
お茶目な主人公でした。
【設問解説】
<1> 理由説明。標準。
いきなり「2つ」を選ぶ新傾向問題。
「偶然遭遇した少年と
タイマンを張ろうと思った理由」。
「とにかく看板をなんとかしてほしい」
「しかし親に連絡はフェアじゃない」
がその理由で、正解はズバリ②と⑥。
その他の選択肢は直接の理由にはならない。
<2> 内容説明。標準。
やはり「現代文」なので、
「語彙」の意味には敏感たるべき。
「身体の底を殴られたような」
=「自身の根底を覆されるような」。
①が正解。
②は「深い孤独」が×。
③は「常識や経験が否定され」が×。
④は「へりくだる」
「少年を増長」が×。
⑤は「妻の言葉を真に受け」が×。
<3> 心情説明。標準。
①は「忍び込むのに決意を要した」
が理由で「見直す」のが×。
「看板を強固に取り付けていた」
が「認めてやりたい」理由。
②は「陰ながら応援」が×。
③が正解。
④は「状況を受け入れたほうが気が楽」
が×。
⑤は「歩み寄ってもよい」が△。
<4(i)> 表現問題。標準。
①は「我が子に向けるような親しみ」
がギャグで×。
②が正解。
③は「つねに」が×。
一度しか呼んでいない。しょうもな。
④は「彼の若さをうらやむ」
がギャグで×。
⑤は「外見から判断」が×。
<4(ⅱ)> 表現問題。標準。
①が正解。
②は「少年が憧れているらしい
映画俳優」が本文になく×。
③は「看板を案山子と呼び」
が本文になく×。
④は「素敵な絵と表現してしまった」
が×。「素敵な絵」ならいいじゃん。
<5(i)> まとめ問題。標準。
俳句にビビることなかれ。
解釈まで書いてくれている。
「遠くから見ている時」はa、
「実際に近付いた時」はb、
ゆえに正解はズバリ①。
<5(ⅱ)> まとめ問題。標準。
はじめは「俳句a、国語辞典ア」、
近付いたら「俳句c、国語辞典イ」、
「動悸をおさえつつ苦笑」=「滑稽」、
正解はズバリ⑤。
①②は上記から×。