【2022年 評論文】
【檜垣立哉
『食べることの哲学』】
【藤原辰史
『食べるとはどういうことか』】
【全体講評】
やや難。25分。
大きく傾向が変わった。
まず、漢字問題に
「異なる意味を持つものを選べ」
という新傾向。
そして、近年の
「会話」「批評文」「ノート」
のような「補足レベル」を超え、
文章が完全に2つになり、
それらの共通点・相違点を
問う問題が登場。
そして表現に関する問題が復活。
難易度としては前年比やや難化。
しかし論理を駆使すれば
満点が狙える良問揃いなのは
相変わらず。
いかんせん選択肢が紛らわしいが
それは流石に致し方なしか。
個人的には大好きな宮沢賢治、
しかも大好きな「よだかの星」
でテンションでぶち上がり。
【本文要旨】
<文章Ⅰ>
よだかは実存の悩み
(自分の存在価値に対する懐疑)
を抱えている。
そしていつか鷹に食べられて
しまうことを恐れつつ、
自分も他の命を奪っていることに
苦悩している。
そして断食して死のうとしている。
そしてそれはわれわれ人間にも
共有する苦悩だ。
どちらかと言えば
「食べること」に対して
マイナスイメージ。
<文章2>
「あなたは豚肉です」と、
「食べられる側」の視点から描く。
人間は「食べていない」、
「食べさせられている」。
食べることは「バトンリレー」だ。
地球全体の生命の循環の一環だ。
どちらかと言えば
「食べること」に対して
プラスイメージ。
<共通項>
「食べること」と
「生きること」の関係性
【設問解説】
<1>漢字問題。標準。
アが②、イが③、エが④、
ウが②、エが③。
新傾向の「異なる意味を選べ」
はとてもいい問題だと思う。
「世襲」だけが「攻める」ではなく
「あとを継ぐ」の意味。
「関与」だけが「与える」ではなく
「関わる」の意味。
<2> 心情問題。標準。
①が正解。
②は「自身も他の命を奪っている苦悩」
という大切な要素がなく×。
③は「弱肉強食の関係を嫌悪」が×。
④は「新しい世界を目指そう」が×。
⑤は「遠くの世界で再生しよう」が×。
<3> 内容説明。標準。
①は「自己の無力さに落胆」が×。
②が正解。
③は「自己を変えようと覚悟」が×。
④は「自己の罪深さに動揺」が×。
⑤は「自己の身勝手さに絶望」が×。
「消去法」というより、
②の「自己に対する強烈な違和感」
がズバリ。
<4> 内容説明。標準。
コレも積極法で、
「別の生き物への命の受け渡し」
を含む②がズバリ正解。
<5> 表現。標準。
コチラは消去法で。
①は「心情」は
述べられていないので×。
②は「厳密に」とまでは言えず×。
③は「食べることの特殊な仕組み」
が×。
④が正解。
⑤は「誇張して表現」が×。
<6(i)> まとめ問題。やや難。
①は「弱者の生命の尊さを意識」
が×。もっともらしいが本文にない。
②が正解(しかし消去法)。
③は「意図的に」が逆で×。
むしろ無意識に食べてしまっている。
④は「食物連鎖から生命を解放」が×。
「ぞっとしながらも食べる」
=「自己の生命を否応なく存続させる」
とする②をすぐに選ぶのは難しいが、
他の選択肢が明らかに間違い。
<6(ⅱ)> まとめ問題。やや難。
①は「自他の生を昇華」が×。
「自己の生を昇華」なら
本文に記載があるが、
いつの間にかそこに
「他」が入り込んでいる。
②は「飢えて死のうとすること」
=「生命が本質的には食べていない」
ではないから×。
③が正解。
④は「食べることによって
生じる序列」が×。