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2023.02.26

【共通テスト現代文10年分講評ー15】2021年①

【2021年 評論文】

【香川雅信『江戸の妖怪革命』】

 

 

【全体講評】

 

標準。25分。

 

共通テスト元年。

複数の文章を関連させようと必死。

 

しかしおおむね良問。

難易度は前年度なみ。

評論文は満点、小説は1ミスで

90%超を目指したいし、

それが十分可能な年だった。

 

評論文・小説ともに、

生徒の対話、

および表現に関する問題が消え、

新傾向の「複数の素材を関連付けた」

問題が登場した。

 

記念すべき共通テスト元年の

テーマが「妖怪」とは、

共通テスト委員会の

ユニークな決断に乾杯。

令和はある意味では妖怪の時代。

 

 

【本文要旨】

 

妖怪に対する認識は、

各々の時代の歴史的背景により

変容していった。

 

筆者は、フーコーのアルケオロジー

(≒エピステーメーの変容

≒時代とともに変わる知の枠組み

≒物・記号・言葉と人間の関係性)

を援用し、それを論証していく。

 

中世の妖怪は「人間」にとって、

「物」というより、

心霊からの「言葉」を伝える

「記号」であり、

「リアリティ」を帯びた存在だった。

 

近世の妖怪は「人間」によって

「記号」を剝ぎ取られ、

「物」そのものになり、

「フィクショナル」な存在になった。

そして「記号」は

「人間」が制御できる「表象」という

「人工的な」ものとなった。

 

近代の妖怪は再び

「リアリティ」を帯びた存在になった。

「人間の絶対性」が疑われ。

「表象」という「人工的な記号」が

成立しなくなり、

彼らは「人間の内部」に

棲みつき始めたからだ。

 

 

【設問解説】

 

<1> 漢字。やや難。

アは③、イは①、ウは②、

エは③、オは①。

「民俗」「良俗」「喚起」

「援用」「隔絶」など、

それぞれ結構難しい。

 

<2> 概念説明。標準。

第3段落の

「意味体系の中に回収」がポイント。

①が正解。

②は「フィクションの領域で

とらえなおす」が逆で×。

③は「未来への不安」が×。

④は「意味の体系をあらためて人間に

気付かせる」が×。

⑤は「意味論的な危機を

人間の心に生み出す」が×。

 

<3> 概念説明。やや難。

①は「考古学の方法に倣い」が×。

②が正解。

③は「要素ごとに分類」が×。

むしろそれらを関連付ける。

④は「ある時代の」が△。

むしろ時代を経て

どう変容していくのかを

考えるのが「アルケオロジー」。

⑤は「大きな世界史的変動」

がギャグで×。

 

<4> 内容説明。やや難。

①は「人間が人間を戒めるための

道具」が×。

②が正解。

③は「実在するかのように」が×。

④は紛らわしいが逆。

「人間の力が世界中に及ぶ」

が契機(きっかけ)で、

「妖怪の表象化」が帰結。

このように因果関係を逆にし

ひっかけるパターンは

現代文の常套手段。

⑤は「人間の性質を戯画的に形象」

がギャグで×。

 

<5(i)> 整理ノート。標準。

Ⅱで③か④に絞り、

「娯楽の対象となった妖怪」は

次段落以降なので正解は④。

 

<5(ⅱ)> 整理ノート。やや易。

これを落とすと

現代文の力はまだまだと

言わざるをえないほどの基本問題。

正解はⅢが③、Ⅳが④。

 

<5(ⅲ)> 整理ノート。標準。

あくまで本文との関係性で考える。

前問の「不可解な内面を持つ人間」

の流れで、

「私が私を制御不能」の②が正解。

①は「他人の認識の中で

生かされている」が×。

③は「会いたいと思っていた」

がギャグで×。

④は「私が私という分身に

コントロールされて」がギャグで×。

⑤は「他人に噂されて困惑」が×。

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