【2019年 小説】
【上林暁『花の精』】
【全体講評】
やや難。25分。
前年度は「キュウリ」、
今年度は「トマト」。
難易度は前年度並み。
リード文を熟読。
今年度も先立たれている…。
妻は入院中だし…。
月見草は雑草と間違われ抜かれるし…。
「評論文」は「論理」を
しっかりマスターすれば、
満点か1ミスでの突破は十分に可能。
しかし「小説」は中々難しい。
時間を気にして
スピードを上げ過ぎて読むと、
あるいは自分の世界に
入りこんで読んでしまうと、
2ミスくらいしてしまう可能性も。
評論文で0ミス&小説で2ミス、
評論文で1ミス&小説で1ミス、
評論文の漢字と小説の語句で1ミス、
合計3ミス以内で
なんとか80%以上死守を目指したい。
【本文要旨】
私は妻が長期入院中、
妹は夫に先立たれた。
傷心のふたりは、
私は花畑を、妹は菜園をつくることで、
心の穴を埋めようとした。
釣りに行く友人の0君に連れられ、
月見草を物色しに多摩川沿いへ。
月見草に興味なさそうだったO君も、
最後には興味を持ってくれたようで
嬉しかった。
その帰り道、
サナトリウム(療養所)が目に入り、
急に入院中の妻を思い出し、
ただただ妻の平穏を願い、
胸がいっぱいになった。
しかしその後、
まるで私を迎えるように咲き誇る
「月見草の群落」に遭遇し、
先程の感傷が吹っ飛ぶほど感動した。
最後に電車の窓から見た
「月見草の原」は、
まるで花の天国のようで、
憂いに満ちた日常から
解放されるように感じた。
【設問解説】
<1> 語句の意味。やや難。
アは③、イは①、ウは②が正解。
アは②、ウは④が紛らわしい。
<2> 心情説明。標準。
正解は③。
①は「いっしょに野菜を育てる」が×。
私が育てるのは草花。しょうもな。
②は「妹に気遅れ」
が本文からは読み取れず×。
④は「妹に対する居心地の悪さ」
が本文からは読み取れず×。
⑤は「妹の姿に将来の希望を見出した」
が×。妹は妹、私は私である。
<3> 理由説明。やや難。
正解は⑤。
いきなり⑤を選ぶのはタフ。
相対的判断が必要で難しい。
①は紛らわしいが、
「O君の行動の意外性」
に触れられておらず×。
②は「月見草を傷付けまいと」
が本文になく×。
③も紛らわしい。
この設問のポイントである
「O君が私の気持ちを
察してくれた」がないから×。
④は「違いを考慮せず
無造作に持ってきた」が×。
44行目に、O君の
「月見草には匂いがあるものと
ないものがある」とのセリフがある。
<4> 心情説明。標準。
正解は②。
①は「忘れようと努めていた」
が本文から読み取れず×。
③は「現実との落差に対する
失望感」が本文から読み取れず×。
④は「妻の病を忘れていたことに
罪悪感」が本文から読み取れず×。
⑤は「妻が退院できないのではとの
不安」が本文からは読み取れず×。
<5> 心情説明。やや難。
正解は①。
勝手に妄想して、
「ハッピーエンドな選択肢」
に惑わされないこと。
ラストの「月見草の原=花の天国」
のシーンは、
あくまで「私」の心情・実存が
揺さぶられるシーンであって、
ここでは「妻」は直接は関係ない。
だから「妻がきっと良くなる」
のような③や⑤は不正解。
②は「庭に月見草が復活する確信」
が本文から読み取れず×。
④は「死後のイメージ」が
「マイナス」で×。
むしろ「天国」の
「プラス」イメージだ。
しかし③か⑤を選んでしまった
受験生も悪くないと思う。
だって小説を読むってのは
「想像力」だから。
その想像力が行き過ぎると、
「客観テストの国語」の正解率に、
時に影響を及ぼしてしまう。
が、ついつい行き過ぎるくらいの
「想像力」を持って「濃密な読書」
が出来る人生は幸福です。
<6> 表現。標準。
正解は④と⑥。
センター試験の伝統芸能の
「消去法」で解く「表現」問題。
時間さえあれば難しくないが、
時間がないので難しい。
センター試験(特に共通テスト)は、
「思考力」と言うなら
受験生に時間をあげて下さい。
現行の共通テストはむしろ逆で、
「じっくり考える」より
「速読即解処理能力テスト」な印象。
じゃあ「思考力」とか言わないで。
①は「妹が快活な性格」
が本文からは読み取れず×。
②は「体言止め」だからと言って
「印象深い記憶であったことを強調」
するとは言えず×。
③は「緊迫感」が×。
「草原がサァサァと音を立てながら」
とか、むしろ全然緊迫感ないです。
⑤は「短い文を繰り返すこと」が、
「私の状況が次第に悪化していく
過程を強調」とまでは言えず×。
「月見草の群落」を見て感動したり、
「月見草の原」が天国に見えたり、
むしろ私の状況は
少しずつ良いほうへ向かっている。