【2018年 評論文】
【有元典文・岡井大介
『デザインド・リアリティ』】
【全体講評】
やや難。25分。
文章量と図の登場に、
少々面食らった受験生も
多いかもしれない。
しかし本年度の文章は、
身近でわかりやすい具体例を
どんどん示してくれるぶん、
前年度の硬質な科学評論「ゴレム」
と比較するとやや読みやすく、
力のある受験生なら満点も可能だ。
それでも、
現古漢合わせ40ページ超の問題量を
たった80分で、と考えると、
やはり総じては「やや難」と
言わざるを得ない。
【本文要旨】
「『デザイン』の定義」
=環境の加工
=対象に新しい意味や価値を与えること
=人々の行動と真理(知覚)が変わる
=アフォーダンスの変化。
「人間の基本的な条件」
=「デザインした現実」を生きる存在
=文化的な意味と価値の世界を生きる。
「´心理学(しんりダッシュがく)」
実際の人間の「心理」とは、
「現実を加工」する
「人間の基本的条件」からして、
常に「デザインされた心理」であって、
なまの「原心理」は想定できない。
しかし「旧来の心理学」は
この「心理(むじるししんり)」
を無自覚に想定しまい批判されている。
筆者は、「旧来の心理学」は、
文化的歴史的条件と不可分一体である
「´心理学(しんりダッシュがく)」、
すなわち「文化心理学」として
再記述されるべきだと主張している。
【設問解説】
<1> 漢字。標準。
アは②、2は③、ウは⑤、
エは⑤、オは②。
これくらいは全問正解したい。
「踏襲」は意味も大事。
以前までの方針を継続すること。
<2> 理由説明。標準。
「表現の特徴に関する問題」
などの一部の例外をのぞき、
「消去法」は使わない!
基本は「積極法」!!
すなわち、「記述式」問題のように
事前に「解答のイメージ」を持ち、
選択肢からそれを探す。
それがなくいきなり選択肢を見ると、
迷宮入りし時間を食う。
本問のポイントは
「世界は多義的でさまざまな
解釈に開かれている」こと。
ズバリ②が完璧に正解。
「明確な正解」と思える選択肢が
ない場合のみ「消去法」、
すなわち「相対的判断」で、
「最も適当」なものを
選ぶようにしよう。
<3> 会話(新傾向)。標準。
新傾向でもたじろがない。
必ず本文中
(本問の場合は設問文も含む)から
解答への根拠を探そう。
「会話」なのだから、「文章」同様、
前の文を受け、後の文に繋がる。
そういう意味では文脈の問題。
本問は、特に□の直後の、
「今ある現実の別ヴァージョンを知覚」
が大きな解答への根拠。
それを言い換えている⑤が正解。
<4> 理由説明。標準。
「傍線部中に指示語がある場合、
もはやそれは指示語問題」。
「このこと」=
「人間はデザインした現実を生きる」。
正解は③。
それ以外の選択肢は
本文に根拠を求められない。
<5> 内容説明。やや難。
正解は①。
②「´心理学」は「心理学」の
捕捉ではなく、
根本的に「再記述」するもの。
③本文では、「人間」と「動物」の
記憶を比べたりはしていない。
④注がポイント。
「デフォルト」=「初期設定」。
「初期」は「´心理学」ではなく
「原心理学(「心理学」)」寄り。
⑤「´心理学」は、
「心理+文化」の不可文体であり、
「心理+現実」の不可文体ではない。
①が完璧でズバリ直接法で選べるが、
紛らわしい選択肢が多くやや難。
<6(i)> 段落の表現。標準。
「表現問題」は「消去法」で解く。
「適当でないもの」を選ぶことに注意。
④が明らかに違うので標準レベル。
<6(ⅱ)> 文章の構成。標準。
今度は「適当なもの」
を選ぶことに注意。
本文は怒涛の「具体例」攻勢、
素直に④を選びたい。