【2017年 小説】
【野上弥生子『秋の一日』】
【全体講評】
やや難。25分。
評論文と同じく前年より難化。
満点は可能だが、
前年度より時間を要するだろう。
リード文をじっくり読む。
「病弱な主人公が、
夫がくれた手提げ籠で、
ピクニックすることを夢見る」
話なのだとマインド・セットする。
次に設問に目を通し、
問5から「主人公が子供を見守る時の
心情に特に注意して読もう」と留意。
さらに問5・問6に関しては、
選択肢にまで簡単に目を通し、
「かァかァ」や「運動会」や
「美術品」や「とや、とや」や
「あんよ」や「22行目」や
「38行目」や「43行目」や
「55行目」や「68行目」が
出てきたら、じっくり読もう、
その都度解こう、と留意する。
【本文要旨】
大好きな季節なのに
いつも病気をしてしまう秋。
しかし今年の秋は珍しく元気で、
主人公は念願の
ピクニックおよび展覧会に、
息子と女中とともに出かけた。
小学校の運動会を見て、また、
その様子を眺めている息子を見て、
主人公は訳もなく涙が溢れる。
主人公は、
展覧会ではある絵画を見て、
その作者の義妹である、
亡くなった女学生時代の
友達のこと思い出し、
しばしその追懐に縛られる。
【設問解説】
<1> やや難
語句の意味を問う問題。
アは①、イは②、ウは①が正解。
アは②が紛らわしいが、
傍線部直後の「熱心に眺めた」
から相対的判断を。
イもそもそも「生一本」が難しく、
ウも②が紛らわしく、
全体的にやや難。
<2> 標準
①は「絵が待ち遠しい」が×。
むしろそのあとの
ピクニックが待ち遠しい。
②は「全快を実感」が本文になし。
③は「行き先がなく悩んでいた」が×。
ピクニックを思いついている。
④が正解。
⑤は「子供が退屈するのではと
ためらった」が本文になし。
<3> やや難
やや難しいが、
「主人公の涙」
=「訳もなく溢れる涙」、
という点を抑え、
本文に根拠を求めることが
難しい選択肢を削っていけば、
正解に至れる。
①は「心弱さから流す涙」が×。
涙は「訳もなく」出る。
②は「子供の将来が不安」が×。
③は「純粋さをいつまでも」が×。
④は「さまざまな苦労をして
流した涙の記憶」が×。
⑤が消去法で正解。
<4> 標準
どちらかというと語彙の問題。
「雲のような追懐に封じられている」
=「次から次へと溢れだす思い出に
縛られている」。
①は「沈んだ気持ち」が×。
「思い出」は悲喜こもごも。
②が正解。
③は「後悔の念」が×。
④は「懸命に思い出そうと」が×。
昨日のように思い出している。
⑤は「取り戻したい」が×。
97行目に「みすぼらしい」とある。
<5> 標準
傍線部が付された
内容説明問題・理由説明問題は、
いきなり選択肢に頼らず、
まずは記述問題だと思って、
自分の頭の中である程度の
解答のイメージを構築してから、
それを探すべく選択肢を見るべき、
すなわち「積極法」で解くべき。
そうしないと選択肢の森に迷い、
時間だけかかりしかも間違うという
地獄が現出する。
しかしこの問5のような問題は
なるべく消去法で説く。
①は「ピクニックを計画する
余裕もない」が×。
ピクニックはふと思い立った。
②は「ささいな事にも暗い影」が×。
主人公のそこまでネガティブな様子は
本文からは読み取れない。
③は「見慣れたもの」が×。
33行目に
「もの珍しい心を持って」とある。
④が正解。
⑤は「娘時代が遠くなってしまったと
嘆く」が本文からは読み取れず×。
<6> 標準
④は「突き放そうとする」が×。
⑤は「絵画にかたどられ人たち」
ならともかく、
「彫刻にかたどられた人たち」
という表現は意味不明。