【2017年 評論文】
【小林傳司
『科学コミュニケーション』】
【全体講評】
やや難。30分。
「難」に近い「やや難」。
前年度は20分程度で満点が狙えたが、
今年度は下手すると30分ほどかかり、
しかも満点は至難。
特に問4が難しい。
「適当」な選択肢はいくつかある。
「最も適当」な選択肢を選ぶ
(相対的判断をする)のが
現代文という科目の難しさ。
読解の際は必ず手を動かすこと。
大事だと思う部分には線を引く、
キーワードだと思う箇所は丸で囲む。
それらを繋いで読み直せば、
それらがそのまま
その文章の要約文になっている、
これが現代文の学習の
ひとつの到達点だ。
最初はピント外れでもいいので、
とにかく手を動かし、文章を汚そう。
演習を重ねるにつれて、
「具体と抽象」「枝葉と骨格」
の違いが少しずつ見えてくる。
【本文要旨】
コリンズとピンチという
科学社会学者コンビが、
科学の本当の姿とは、
ユダヤ神話の「ゴレム」同様、
プラス面とマイナス面の両方を
併せ持つものである、と言った。
そして彼らは科学者の
「科学は全面的に善、もっと科学を」
「科学に無知な市民を啓蒙しよう」
という姿勢を、
「科学者は本当の科学を知らない」
と批判した。
その点で、
筆者は彼らの議論を評価している。
しかしコリンズとピンチは、
前述の科学者たち同様、
市民も「本当の科学を知らない」
という認識に立ってしまった。
では「誰が本当の科学を知るか?」
と問われれば、
「それはわれわれ科学社会学者だ」
という議論を構築してしまった。
その点で、
筆者は彼らの議論を批判している。
【設問解説】
<1> 標準
漢字問題。
アが⑤、イが⑤、ウが③、
エが①、オが④。
アの「旧に倍する」は消去法で。
<2> 標準
①は「先進国としての威信を保ち」
が本文になし。
②は「国家に奉仕し続ける」
が本文になし。
③は「為政者の厳重な管理下」
が本文になし。
④は「経済大国が国力を向上」
が本文になし。
⑤が正解。
<3> 標準
①は「明確な危機感」が言い過ぎ。
②は「営利的な傾向に対する失望感」
がズレ。
③は「人工物製造の方法に対する
違和感」がズレ。
④が正解。
⑤は「市民の感覚から乖離」
が本文になし。
<4> 難
「最も適当」なものを選ぶ。
「科学者の誤った科学のイメージ」を
「ゴレムのイメージに取りかえる」
=「ゴレム」も「現実の科学」も
「+-両面がある」。
①は適切な選択肢ではあるが、
「ゴレム」の説明も「科学」の説明も
マイナスに偏りすぎで、
「最も適当」ではない。
②は「科学は応用することが
容易ではない」が本文になし。
科学は「制御すべき」もの。
③が正解。
④は「万能」が×。
ゴレムは万能ではない。
⑤も適切な選択肢ではあるが、
「現実の科学」の「マイナス面」
が書かれておらず、
「相対的判断」で③に劣る。
①と⑤は選んでしまい得る難問。
③が、「ゴレム」と「現実の科学」が
ともに+-の両面を併せ持つことが、
最も明確に描写されている。
<5> やや難
①は「小説家」云々が関係ない。
②は「市民にもっと科学を伝えるべき」
がダメ。第10段落に
「市民に伝えるべきは関係」とある。
③は「市民に疑問を差しはさむ
余地などない」が、
もし正解ならスゴい強権的な文章。
④が正解。
⑤は「社会科学者は科学知識そのものを
十分に身に着けていない」
が本文になし。
<6(i)> やや難
語彙力の問題。
「対症療法」は
「その場しのぎの」という、
どちらかと言えば
マイナスイメージの言葉。
科学社会学者のふたりは、
どちらかと言えば逆の
「原因治療」を模索した。
ゆえに③が正解。
<6(ⅱ)> やや難
これも語彙力の問題。
「時系列」は
「経過に沿って」の意。
第1段落で20世紀、
第3段落で19世紀に
戻っているから
「経過に沿って」いない。
ゆえに①が正解。