【2015年 小説】
【小池昌予『石を愛でる人』】
【全体講評】
やや難。25分。
孤独な心を石に喩えた、
随筆に近い純文学。
ストーリーが解り易かった
2014年度より難化。
評論文同様、問6を両方
正解するのは中々骨が折れる。
一般的には
ネガティブイメージな「孤独」が、
この文章ではむしろ
ポジティブなイメージを
付与されていることを読み取れたか。
【本文要旨】
石を愛でる、
亡くなった妻の愛を惜しむ、
「アイセキカ」山形さんと、
同じく石が好きで孤独な私の、
心の交流。
「言葉」を介した
「人間との熱い関係」
に疲れた私は、
「石との冷たい関係」
がもたらす「孤独」に、
むしろ癒しを感じている。
私はまた、人を孤独に包む傘と、
そのきっかくとなる雨が好きだ。
子供の頃から、湿った水辺の石にも
魅力を感じていた。
強引だと思っていた山形さんは、
むしろ「強さ」と「弱さ」が
同居する不思議な人だった。
そんな山形さんに、
筆者はだんだんと心惹かれていく。
【設問解説】
<1> やや難
語句の意味を問う問題。
アは③、イは⑤、ウが③。
イが①と迷うかもしれない。
<2> やや難
①は「緊張感」(-イメージ)が×。
筆者は石の「冷たさ」に
「あたたかさ」(+イメージ)を
感じており、むしろ逆。
②が正解。
③は「人との心の通い合いの大切さ」
が×。これもむしろ逆で、
少なくともこの段階では、
筆者はまだ人間関係に疲れている。
④は「嘘をつき自分を偽る」
が本文からは読み取れない。
⑤は「距離を置いて見つ直してみる」
が本文からは読み取れない。
<3> 標準
①は「希望を与えてくれる明るさ」
が言い過ぎで×。
山形さんはそこまで明るくない。
②は「自信を持たせようとする」が×。
「自信を持っている」のは山形さん。
③が正解。
④は「ふりをして」が×。
山形さんのそんな二面性は
本文からは読み取れない。
⑤「無責任」が×。
<4> やや難
雨≒傘≒石≒孤独な世界を
創ってくれる、私にとって愛しいもの。
①が正解。
②は「アトリエにも水石の世界がある」
は傍線部より後に認識したことゆえ、
傍線部時点の理由にはならず×。
③は、「女優」と「石」との関係性は
本文に述べられておらず×。
ちなみに「女優」は
「傘」との関連で述べられている。
④は「乾いた石に愛着」が逆。
むしろ筆者は乾いた石には
マイナスイメージを持っている。
⑤は「外出が億劫」が本文に記載なし。
<5> やや難
①は「似たもの同士の孤独な二人」
が迷うが、
筆者にも山形さん同様の
「強さと弱さの二面性がある」
とは本文には述べられていない。
②が正解。
③「自分も石を出品してみたい」
が本文になしで×。
④は「孤独から脱するきっかけ」が×。
筆者はそもそも
「孤独」を愛しており、
「孤独」から脱却したいとは
思っていない。
この文章のテーマを
理解できているか、の
試金石的な設問が本問。
この文章に於いて「孤独」は、
ネガティブな言葉ではない。
ある意味で人間は石のように
それぞれにずっと孤独だ、
ということがテーマ。
⑤「石との関係が少しずつ壊れて」
が本文からは読み取れず×。
<6> やや難
①は良さそう、いったん保留。
②は「投げやり」が×。
③は「軽んじる気持ちが生じた」が×。
④は「石から次第に心が離れる」が×。
⑤はとてもよさそう、いったん保留。
⑥は「表現技法が洗練された」が×。
消去法で正解は①と⑤。