教室ブログ
こんにちは、個別指導Wam藤の木校です。
自分は正しい使い方だと思っていても実は間違えて使っている言葉、結構あるのをご存知ですか。
例えば「爆笑」。よく「昨日のTV見て爆笑したわ」とか言いますが、「爆笑」とは本来「大勢が笑う」ことを意味する言葉です。でも、どうやらかなり以前から「大笑いすること」自体を「爆笑」として表現しているようで、実際には誤用ではなくなってしまっているそうです。筆者はよく「ら」抜き言葉を使いそうになることがあります。
今回はこのような「みんなが間違えている言葉」について取り上げてみましょう。
まずは「にやける」。「彼はにやけた顔をしている」のように「薄笑いを浮かべている」という意味だと、7割台半ばの人が答えたそうです（文化庁「国語に関する世論調査」）。では本来はどのような意味の言葉でしょうか。
本来の「にやける」の例を見てみましょう。
＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝
この時黒羽二重（くろはぶたえ）の五所紋（いつつもん）の羽織を着流した、ひどくにやけた男が、金鎖の前に来て杯を貰っている。二十代の驚くべく垢（あか）の抜けた男で、物を言う度に、薄化粧をしているらしい頬に、竪（たて）に三本ばかり深い皺（しわ）が寄る。その物を言う声が、なんとも言えない、不自然な、きいきい云うような声である。≪森鷗外「青年」 明治43年≫
＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝
ここでは男について「ひどくにやけた」と形容されています。その様子を「驚くべく垢の抜けた男」「薄化粧をしているらしい頬」「なんとも言えない、不自然な、きいきい云うような声」などと描写されていますが、薄笑いを浮かべているといったことは読み取れません。
このように「にやける」は、本来「男性がなよなよとしていること、女性のように色っぽい様子や姿をしていること」を言うそうです。元々「にやけ」とは、鎌倉・室町時代頃に貴人の側に付き従って男色の対象となった少年を意味していました。ですから「にやける」には薄笑いを浮かべているという意味はなく、また女性の形容に使われることも普通はなかったそうです。どうやら語源は「ナンパ」に近いようですね（笑）
これは、「にやける」の音が、薄笑いを浮かべることを表す「にやにやする」という言葉と似ていることに起因すると考えられています。本来「男らしくない」「なよなよしている」という意味であった「にやける」は、浮ついている様子を表す場合にも使われるようになり、さらに「にやにやする」という言葉と結び付いて、男性か女性かに関係なく「薄笑いを浮かべている」様子を表す言葉として用いられるようになってきたのでしょう。
しかし、先に書きましたように、7割台半ばの人が「薄笑いを浮かべている」という意味だと答えたそうなので、もう間違いとは言えないかと思います。
次は「おもむろに」です。あまり使わないかもしれませんが、「ひどい言葉を投げ付けられて，彼女はおもむろに席を立った。」のように使います。ではこのとき「彼女」はどのように「席を立った」のでしょうか。
本来は「ゆっくりと」という意味です。でも「急いで、席を蹴るように」と思った方も多いのではないでしょうか。文化庁「国語に関する世論調査」によると、本来の意味である「ゆっくりと」を選んだ人が44.5％、本来の意味ではない「不意に」を選んだ人が40.8％と、あまり差がない結果だったそうです。
「おもむろに」という副詞は、静止状態から動き始めようとするときやある動作から別の動作に移るときに多く使われます。このため「不意に」「急に」という意味だと、あらかじめ知識がないと受け取ってしまいやすいのではないか、と考えられています。
でも世論調査の結果でも差があまりなかったことからも、「どちらでもよい」のではないでしょうか。
このように「みんなが間違えている言葉」は結構あります。また、漢字の読みなどでは誤用されすぎてそれが新しく容認されるようになるなど、最近では寛容な傾向にあります。例）代替…だいがえ（本来は「だいたい」）
皆さんも「あれ、これどういう意味だろう」と思ったらぜひ調べてみてください。もしかすると普段使っている言葉でも意外に少し違ったり大きく違ったりするかもしれません。こういうところから国語の魅力を感じてもらえればと思います。
【参考】
言葉のQ&A（文化庁国語課）
https://www.bunka.go.jp/prmagazine/rensai/kotoba/kotoba_001.html
https://www.bunka.go.jp/prmagazine/rensai/kotoba/kotoba_014.html
ほとんどの人が実は間違って使ってた日本語
https://ranking.goo.ne.jp/column/3087/ranking/48958/
