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2022.06.15

どこへでも行けてどこへも行けない私たち

皆さんこんにちは。WAM婦中校の車です。

 

私が学生の頃は、「趣味はネットサーフィンです」と言う人が多かったものですが、近頃はネットサーフィンという言葉自体ほとんど耳にすることがありません。
もっと言うと、昔はインターネット上のホームページを閲覧することを「〇〇のホームページに行く」と表現しましたが、最近は行くとは言わなくなりましたね。

 

なぜそのような表現が使われなくなったのかと考えると、単なる言葉の流行り廃りだけではなく、我々のインターネットに対する感覚が変わったのが大きいと思います。
簡単に言うと、昔と比べてインターネットへのアクセスが手軽になったからです。

 

そもそも私たちがインターネットを利用しているとき、実際にどこかへ行っているわけではないですし、ましてやサーフィンなどしていません。
世界のどこかのサーバーに入っているデータをダウンロードして見ているだけです。
それがまるで日常とは違う空間へ移動しているような気分を味わえるから、もののたとえで「行く」と表現していただけです。
インターネットの回線の速さや端末の持ちやすさ、検索エンジンの性能などが昔と比べて格段に進歩したことにより、今では遠くへ行っている感触が味わえなくなっているのです。おそらくもっと古い時代に、初めてテレビを見た人はまさにこの「どこか別の世界へ連れていかれる感覚」を味わったことと思いますが、テレビが普及し、コタツに入りながらリモコンで操作できるようになった今ではそのような気分になれないのと同じです。

 

もちろんこれは技術の進歩の結果なので喜ばしいことなのですが、人が本能的に求める「別世界へ行けるワクワク感」が逆に失われるという皮肉なジレンマを抱えているように見えます。
インターネットで世界の遠い国の様子を見ることができる今でも、やはり実際に現地へ旅行へ行きたいと思う人が多いわけです。

 

そして昨今、インターネットの世界ではVR(別称メタバース)という技術が注目されています。
最新の技術を用いて、家にいながらまるで別世界へ移動しているような気分を味わい、その世界で人との交流もできるという仕組みが作られています。
私の予想ですが、このVRも10年後、20年後には今よりずっと手軽に利用できるようになり、ユーザーが増加し、それによってワクワク感は失われていってしまうと思います。

 

技術が進歩することにより、かつては高かったハードルが低くなり、また別の高いハードルを探し求めるという、不思議なイタチごっこを我々人間はこれからも続けていくのでしょう。

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