教室ブログ

2022.03.31

知への敬意

 インターネットの普及により、知りたい情報は検索すればすぐに知ることができるようになった。また、英文を入力すれば即座に日本語訳に変換してくれたりもする(優秀な翻訳サイトはそれほど多くないが)。
 こうした状況が日常になってくると、わざわざ本を買って知識を得ることは時間もお金もかかるので、敬遠する人が増えてくる。「わざわざ本を買う必要はない。ネットで十分だ。」というわけである。
 さて、ここで私が感じているのが、「知への敬意」が希釈されているように感じる、ということである。同じ知識を得るのであれば時間もお金も労力も少ない方が良い、という考え方は理解できる。しかし、それを続けることにより失うものもあるだろう。それが「知への敬意」であり、延いては過去の天才たちへの敬意である。過去の天才たちは、様々な分野で「今よりも良い世の中にしたい」という一心で努力を重ね、それらの積み重ねがあるからこそ今私たちはこうして豊かな生活を送ることができている。
 「知への敬意」が薄れている人は、こういったことを考える機会を構造的に奪われていることに気付いているのかどうかわからないが、このように時間的にも空間的にも別の世界に思いを馳せることで、物事に対する見方にも大きく影響してくる。そしてそれが視野を広げてもくれる。
 私などは、本を読んでいるときに「これほどの知識をこんな安価で教えてもらって良いのか」とよく考えるのだが、このように常に学ばせてもらっているという姿勢が人格形成的にも精神衛生的にも重要なことだと考えている。私個人の美学に過ぎない、と言われれば全くその通りなのであるが。

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