タイトルに掲げた問題の一部を紹介すると、
「なぜ平安末・鎌倉という時代にのみ、すぐれた宗教家が輩出したのか説明せよ」という問題でした。
出典は、歴史家 網野善彦『無縁・公界・楽』の序文からです。
ちなみに、この年の東大の日本史の第1問も、いまだに語り継がれている有名問題です。
以前に、【数学】のブログで、同じく東大の2003年の問題で、
「円周率が3.05より大きいことを証明せよ」というのを紹介しました。
この問題には、解答は幾通りもありました。
しかし、この日本史の問題には、解答がありません!
問題文には、
「日本の歴史学がいまだ完全な解答をみいだしていないものであると思われる」
と書いてあるくらいです。
日本史の専門家ですら解明できていない問題を、入試に出題したわけです。
さすが、東大です。
採点が、途方もなく大変だったと思いますが、
優秀な生徒を選び取ろうという、大学側の本気度が伺えます。
ところで、若いころの私は、この問題が、そもそも成り立つのかが疑問でした。
平安末・鎌倉という時代にのみ、すぐれた宗教家が出てきたのは、
たまたま偶然だったのではないか?
つまり、将来すぐれた宗教家になるであろう才能を持った人が、
たまたまこの時代に集中して生まれただけなのではないか?
個人の力ではなく、当時の環境に原因を求めるというなら、
1930年代にヒトラーやムッソリーニという何千万人もの命を奪った指導者が出てきたのも、
当時の社会情勢が、そういう人物を作り上げてしまったとでも言うのか!
今は、何か分からないことがあれば、
ネット検索で、その場で瞬時に、答えを得られる時代です。
それは、確かに便利なのですが、
時には、答えのない問題を、自分の頭で考え続けるのも、
大事なことだと思います。
中山校 渡辺