こんにちは。個別指導Wam香川です。
小中高校生の保護者の皆さんに、「学生時代の勉強思い出せますか?」という質問を投げかけると、ほとんどの場合は「(少しだけ)昔の事だから、正直なところ忘れてしまっていますね」という答えが返ってきます。
ふいに我が子から宿題の分からない所を聞かれて、「ん?どれどれ、うーん…確かこういうのを習った覚えが…はて?どうやるんだったかな?今ちょっと忙しいから、お母さん(お父さん)に聞きなさい」という回想シーンが浮かんだ方がいるかもしれません。
誰しも勉強の「内容」について思い出そうとすると、余程印象に残っているものか、それこそ「何度も必死でやった」ものしか出てこないのではないでしょうか。
ドイツの心理学者、ヘルマン・エビングハウスが発表した「エビングハウスの忘却曲線」といえば、聞いたことがある方も多いでしょう。自ら「子音・母音・子音」から成り立つ無意味な音節を記憶し、その再生率を調べる実験を行い、グラフ化することでこの曲線を導いています。結果は以下の通り。
20分後には42%忘れる
1時間後には56%忘れる
9時間後には64%忘れる
1日後には67%忘れる
2日後には72%忘れる
6日後には75%忘れる
31日後には79%忘れる
記憶してからわずか1時間で、半分以上忘れてしまうのなら、世のお父さん、お母さんが学生時代に勉強したことを覚えていないのも致し方ありません。
そう結論付けたいところですが、そもそもこのデータは実験段階で“「子音・母音・子音」から成り立つ無意味な音節を記憶”した結果である、ということがポイントです。もし仮に、記憶する内容が被験者にとって一定のリズムや、何らかの関連性をもつなど、意味のあるものだったとしたら、どうでしょうか。
そこでもう一度、学生時代の勉強を思い出してみてください。
私の記憶にも微かに残っています。中学時代の午後の教室、少しだけ開いた窓から入ってくる、やわらかな光と心地よい風。先生の口から発せられる念仏のような声(先生、ごめんなさい)。
この瞬間の私にとって、先生の話す内容は、エビングハウスの実験における「無意味な音節」と同じになってしまっているのです。この時の授業が何の教科で、どんなことを習っていたのか、さっぱり思い出せないのですが、この時たまたま開いた窓から迷い込んだ一匹の蜂によって、教室内がパニックになったことと、その時の友達の驚いた表情だけは、今でも鮮明に覚えています。
同じ色、形をした引き出しに何が入っているのかを覚えておくためには、何度も開け閉めするか、入れる段階でマークを入れる、「1段目に貴重品、2段目にタオル類、3段目に衣類」など規則性を持たせておくなどが有効で、皆さんのご家庭でも自然とそうなっていませんか?要は忘れないようにするため、または忘れる前提で思い出せるためにできることがあるということです。
記憶の引き出しも同じで、何度も開け閉めすることは「繰り返し」という習慣の中ですぐに取り出せるものとなっていて、「持続・継続型の記憶」といえます。たとえば、ひらがなの読み書きにしても、自分の住所・電話番号にしても、普段の生活の中で取り出す機会が多い記憶は苦もなく出てくるでしょう。毎日の宿題や家庭学習も、何度も繰り返すことで記憶を定着させようとするものです。
マークを入れる記憶の仕方は、「喚起型の記憶」と言い換えることができます。ある音楽を聴いた時や、ふと嗅いだ匂いに意図せず呼び起こされる記憶があります。これは他者にとっては何の関連性もないものが、その場面の記憶を取り出すスイッチになり得ることを示しています。ただし、本来記憶すべきものに対してスイッチとなり得る何らかの刺激を必要とし、特定の記憶を意図的に取り出そうとする時、その刺激をスイッチとして発動すること、目的の記憶を確実に取り出すことができるかどうかなど、不確実な要素が大きいものです。
一般的に、引き出しに入れるものが「文具」や「衣類」のように分類されていたら、取り出しやすくなります。これは自分にとって覚えやすい順番や法則を用いる「規則(法則)・関連型の記憶」です。たとえば、歴史の年号を暗記するのに語呂合わせを使った方は多いのではないでしょうか。私が学生時代にやっていたのは、連想ゲームのように「〇〇と言えば?」という問いに対して浮かぶ言葉やイメージを、いくつ書き出せるかというものです。
①「香川県と言えば?」
②「聖徳太子と言えば?」
③「両生類と言えば?」
など。皆さんは何が思い浮かびましたか?
①なら「うどん好きすぎ!」「オリーブ」「骨付き鶏」「うちわ」「こんぴらさん」「盆栽」「日本一面積が小さい」「雨が少ない」「ため池多すぎ!」etc たくさん出てきそうですよね。
1つの引き出しに入れるものは、1つではなく複数でもいいのですから、似ている物や関連のあるものなどを一緒に入れることで、それぞれが紐づけされて取り出しやすくなりますよね。
さて、初めに戻りますが、「学生時代の勉強思い出せますか?」
勉強の内容についてではありません。お父さん、お母さんが学生時代の勉強で工夫したり、努力してきた経験をお子さんに語ってあげてほしいのです。
「お母さんの学生時代にはこんな文具が流行っていて、みんな持ってたよ」
こういった話でもいいかもしれません。お父さん、お母さんが自分と同じように学生時代を過ごしてきて、勉強や友達のことで頑張ったり悩んだりしてきたんだということが聞けるのは、きっとお子さんにとってとても嬉しいことであり、大切な時間になるはずです。
そういった話の後なら「だから、勉強がんばってね」という言葉も、「えー」と言いつつ、いつもより少しだけ素直に受け入れてくれるのではないでしょうか。
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