「おっさん」
という言葉がある。
調べてみると次のように書いてあった。
《「おじさん」の音変化》中年の男性を親しんで、また、軽くみてよぶ語。
「隣のおっさん」「おっさんくさい格好」
《「おしょうさま」の音変化》和尚・僧侶などを親しんでいう語。
下段はともかく、通常の意味での「おっさん」は調べるまでもないくらい意味を知っている。
「おっさん」
僕は、この言葉が好きでもあり嫌いでもある。
「おっさん」
まず音の響きがいい、気がする。
ちょうどよく発音しやすく、かつひょうきんな感じがする。
口にしてみると、なぜかちょっと面白い感じがするのだ。
そんなところが好きだ。
一方で、嫌いでもある。
例えば、
自動車の「バス」や「トラック」
という言葉を聞くと、何となく排気ガスのにおいを思い出してしまう。
それから、あの巨体を止めるエアブレーキの排気音を思い出す。
ついでに、車酔いした時の胸がむかむかする感覚も彷彿とさせる。
これは、「バス」や「トラック」という言葉から、無意識に頭の中でそれらの姿を思い浮かべているからだろう。
そしてその思い浮かべた姿が、記憶の中の五感とつながることで、においや音といった感覚を思い出すのだろう。
「梅干しをみると唾液がでる」のと理屈が似ている気がする。
※梅干しを見ると、すっぱかったことを体が思い出して勝手に唾液がでる。
では
「おっさん」
はどうか。
僕がこの言葉を見聞きした時、思い浮かべるのは
「よれよれのスーツを着ている中年太りし、髪の毛がすっかすかになっている男」
だ。
悪く言うと清潔感がない感じがする容姿というのか。
あまり良いにおいはしないであろうその風貌。
頻繁に思い浮かべると気分が悪くなってくるような、そんな感じがする。
(※中年男性を悪く言っているわけではなく、あくまで僕のイメージの中の人物が、であることは承知願いたい)
だから、僕はこの言葉が嫌いだ。
ちなみに、そんな人物は知らないし、周りの人間のうちのだれか、というわけではない。
僕の頭の中にしかいない、「おっさん」という概念そのものなのだろう。
或いは、僕がそのうちその人物になってしまうのだろうか。
そうなってからでは遅いので、頭はともかく中年太りには気を付けよう……。
閑話休題。
しかし、概念だけの人物というのはまたおかしな話である。
だがそういう概念だけの人物像が、僕の頭の中には複数いて、この「おっさん」もその一人だ。
ちなみに他には、「人間」や「〇〇人」(〇〇には地域名が入る)といっ言葉にそのような人物像がある。
これは僕だけなのだろうか。
だれか共感できる人はいないものか。
ためしに検索エンジンGoogleで「おっさん」と画像検索してみた。
するとなぜか、俳優の志賀廣太郎氏の画像がトップヒットに出てきた。
だれだ、おっさんというワードを名俳優にタグ付けした狼藉者は。