生徒と一緒に国語の勉強をしていると、とてもおもしろいお話に出会うことがよくあります。
古代インドのお話です。
Aという金持ちがいました。Aはある国のBという金持ちの家を訪れたところ、その家は三階建てで、三階からの眺めはとても素晴らしいものでした。Aの国には二階建ての家すらもありません。
「わしはBにも負けないほど財産を持っている。どうして今まで三階建ての家を建てなかったのだろうか」
帰国したAはさっそく大工を呼び、つくれるかとたずねました。大工は「つくれる」という。
「作ってくれ」と頼んだAは毎日建築現場を見に行きます。
「まだか、まだか」と聞くAに大工は「いましっかりと基礎固(きそがた)めをしています」という。
ようやく建築が始まり、Aはそわそわしながら待っています。でもなかなかできません。
大工にたずねると「まだまだですよ。今一階を作っているところです。」と言います。
それからしばらくしてまたAがたずねると、「もう少しかかります。今,二階をつくっているところですから。」
それを聞いたAは怒りだしました。
「けしからんではないか!わしは三階をつくってくれと言ったのだ。一階や二階なんていらない!早く三階をつくってくれ!」
「それは無茶というものです。一番下の階がつくらないで二階はできません。二階がないと三階もできません。」
しかし、Aはまったく聞き入れようとしません。
「わしは下の二階はいらない。どうあっても一番上の階だけつくってくれ!」これを聞いた周りの人々はみな笑ったといいいます。
昔の人たちは後世の人たちに何かを伝えたくて、たとえばなしを物語という形にして残しています。読む人の感じ方も人それぞれです。「三階だけが欲しい」みなさんはこのお話をどう感じ、なぜそう思うのか。考えてみるのも国語の勉強になると思いますよ。