教室ブログ

2019.08.31

菌類

こんばんは、Wam六十谷校の川口です。

以前から興味深かった菌類について調べていました。あまり生態が知られていないのですが、彼らが生物史に与えてきた影響は大きいです。

菌類は真菌、細菌、ウイルスのグループに分けられます。例えば、椎茸、黒かび、イーストなどは真菌、納豆菌などは細菌、病原菌は細菌やウイルスなどになります。これらは菌糸からできており、菌糸が大きな塊となったものをキノコ、そうでないものをカビ、分離したものを酵母などと分類しています。外見だけで判断してしまいますが、菌糸が全てに共通している特徴であることを改めて知りました。

菌類のおもしろい事例として、落雷や電気ショックで収量が増加するというものがあります。1000万分の1秒間に5万~10万ボルトの電気を浴びせたときにキノコの生長が最も活発になることが実験で分かっており、このレベルの電気を浴びたシイタケの収穫量は、電気を浴びていない原木からの収穫量の2倍になったり、ナメコは収穫量が80%増加しました。この仕組みは解明されていませんが、死ぬ前に自己を再生しておかなければならないと感じ、稲妻の察知で自動的に成長を加速させて、子実体の数を増やすのだと予想されています。ほかの植物でも人工的な稲妻を浴びせることで発芽が早くなる傾向にあることが確認されているため、今後明らかになっていくのだと思われます。インドの聖典「リグ・ヴェーダ」に「雷の神はソーマ(キノコ)の父である」という主旨の記述があるため、理由は不明でも古くから知られていたことのようです。

 

菌類は分解者なので、有機物を分解し、細菌はそれを小さな分子に変えて無機塩類として土壌中に放出します。それを植物が吸い上げることで生態系が循環します。特に倒木や落葉は分解が難しく、菌類は菌糸により細胞壁に穴を空け、分解酵素を分泌することで分解しています。ペルム紀にはすでに木材を分解する菌類がおり、石炭紀には難分解性高分子であるリグニンを分解できる菌類が進化し、有機炭素の貯蔵量が減少したという説もあります。このため、菌類が木材を分解し続けた結果、植物遺体由来の石炭の形成量が減少したのではないかという考えがあり、それならば菌類が石炭紀を終焉へと導いたことになり、菌類の影響力の大きさが推し量れます。

また、植物の根と共生している菌根菌がいます。一般的な菌根共生では菌根菌は土壌中から集めたリンや窒素を植物にわたし、植物は光合成で得た有機化合物を菌根菌に供給しています。この共生によって、植物は土壌中からの無機塩類の吸収効率を高めて、菌根菌は有機化合物を安定的に得ることができます。陸上植物の8割に何らかの菌根共生が見られるので、植物にとってなくてはならないパートナーです。知名度が高いものはマツタケで、アカマツなどの根に外生菌根と呼ばれる菌根を形成する共生菌です。苔類やツノゴケ類の仮根にも共生菌がおり、コケ植物には根がないため、菌根様共生といわれています。

菌類と緑藻類・藍藻類が合わさった共生体として地衣類があります。地衣化することで菌類は藻類に住処を提供し、藻類は光合成によって得た有機化合物を菌類に供給します。地衣類はよくコケと混同されますが、菌糸でできた体内に単細胞の藻類が共生している複合生物であり、コケ植物とは程遠い生物です。

地衣類は人工衛星に取り付けられた実験台の上で10日間の宇宙空間での暴露に耐えて生還したという記録があり、放射線や紫外線にさらされている間は休眠し、地球に戻ってから活性し、胞子の発芽が確認されました。菌類の推定種数は150万種とも言われており、1000万種という推定値もあります。植物は45万、動物は1100万、昆虫は780万種とすると生物の中でかなり大きなウェイトを占めているといえます。しかし、現在把握できているものは10万種しかなく、キノコでさえ、推定種数の6~8割が未知の状態です。発見しづらいものが多いこともありますが、今後多くの種が見つかる未開の分野であると思います。

新たな菌類やその特性の発見によって、生物やその生活が変化していくことがとても刺激的だと感じました。図鑑や動画などでみなさんも見てみてはどうでしょうか。

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