教室ブログ

2019.03.31

こんばんは。Wam六十谷校の川口です。

 

東風吹かば にほひをこせよ 梅の花、主なしとて春を忘るな

 

と菅原道真の歌にありますが、この東風(こち)という読みは特殊で、コチ(小風)の義や、ヒカチ(東風)の約転、コフキの反コヒの転でコは木の精で虎のこと、虎がウソブイて風を成すなど語源は諸説ありますが、こち(哿吉)とも読めるこの春風は道真には「とても良い吉兆の風」と見做されています。他の方位でも南風は”はえ”という読みがありますが、北風、西風は冷害や時化など良くないことを引き起こすため地方によって呼び名が違うようです。外国でも風の名前は無数にあり、ミストラルやシロッコなど聞いたことがあるものも多いです。ネイティブ・アメリカンの伝承話では雪をウパシ、風をレイラと呼ぶようで人名にもよく使われます。

この東風は赤道域上空では西風と約2年周期で交代する成層圏赤道準2年周期振動(QBO)というものを起こしています。これはケルビン波と混合ロスビー重力波の鉛直伝播による運動量の変化で引き起こされます。赤道域の成層圏・中間圏では半年周期振動も起きており、対流圏からの波動の伝播が関わっているようです。

 

この2年周期が弱まっていることがJAMSTECの調査などで分かっています。地球シミュレータを利用し高解像度全球気候モデルを実行することで、このQBO崩壊イベントの再現に世界で初めて成功したことで、直接の原因が北半球亜熱帯成層圏の東西風の構造によって屈折しながら伝わった大気波動が、高度19km付近で強まるためであることを明らかにしました。成層圏における大気の流れにはブリューワー・ドブソン(BD)循環があり、赤道から南北極に大気中のオゾン、水蒸気、メタンなどを運びます。シミュレータのモデルによってQBOが弱まり、BDが強化されていることが確認でき、気象予測への効果だけでなく、赤道域成層圏で多く生成されているオゾンがBD循環の強化で赤道域から中高緯度へ運ばれることになり、オゾンホールが回復する方向性を確認でき、地球温暖化に関するシグナルと現象を実証的に明示することができています。

 

大気、海流の動きは複雑でQBOの他に太平洋十年規模振動、北大西洋振動、南方振動、北極振動など多くの現象が関係しているようです。東風に季節の移ろいと不思議を感じます。

 

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