こんにちは。Wam六十谷校の川口です。
寒いせいか最近甘いものが食べたくなります。和菓子も洋菓子も好きですが、糖分の取り過ぎは気になるところです。
佐藤健太郎さんの炭素文明論の中では、糖の歴史を辿っています。当初インドなどで育てられていたサトウキビによる白糖の精製から始まり、砂糖はアフリカ、ヨーロッパにも拡がっていきます。アメリカ大陸発見後も、海岸沿いにサトウキビプランテーションが広大な土地を埋め尽くし、これらは土地を激しく痩せさせ、焼畑とともに行われることで産業を育たなくさせるため、代替品が求められていました。
19世紀後半にはサッカリンやアスパルテームなどの合成甘味料が登場します。これらの合成甘味料は砂糖より200~300倍も甘く、しかも炭水化物として体内に吸収されないので、カロリーはないという夢のような化合物です。現在は砂糖の600倍もの甘さを誇るスクラロースが一般的な食品に使われています。食品用ではないですが、ラグドゥネームという化合物は砂糖の20~30万倍の甘さを感じるようです。
これらの構造や性質には共通点がなく、それぞれの化合物が、どうして同じように甘味を呈するかというのは非常に謎です。現在の研究では、甘さを感じる一つの受容体が需要ポケット内のアミノ酸残基を巧妙に使い分け、化学的性質の異なる多種類の低分子甘味物質を受容している様子が報告されているようです。甘味受容体は口腔内以外にも、恒常性に関わる各器官に発現し、生体内の血糖値センサーの役割も担っており、味覚と健康への追求には更なる可能性が開かれています。
同書では炭素が関わるデンプン、砂糖、香辛料、カフェイン、エタノールなどの嗜好品にについて語られます。人と歴史、もっと言えば国がこれらの嗜好品によって動かされてきた事実は貿易や戦争の舞台裏を見るようで興味深いです。
また、エネルギーの確保という面から化石燃料はもちろんですが、植物を育てるのに重要な肥料も枯渇してきます。尿素、アンモニア、リンなどの自然肥料は貴重な資源とされ、政策として民間の堆肥を回収していた時代もありました。各地で発見されたチリ硝石も底が見え始め、マルサスの人口論の影響もあり、人口窒素固定が求められ、多くの研究が行われるようになりました。ハーバーボッシュ法によりアンモニアの合成が成し遂げられたことで世界の食糧危機は回避されましたが、世界的な人口増加と化石エネルギーの埋蔵量は不明であり、遺伝研究や代替エネルギーの開発は今後の課題となっています。