こんばんは、Wam六十谷校の川口です。
今年も一年が終わろうとしています。先日望月教授の論文の査読が完了し、正式にABC予想の証明が認められました。朝日新聞ではトップ記事で、思わず生徒に感動を伝えておりました。
新聞やニュースの内容では整数aと整数bの和がcのときに成立する特別な関係を示す、などと曖昧な記述でその価値が伝わりませんが、これはワイルズやペレルマンの業績と並ぶ今世紀の数学史上最大の発見だと言えます。
ABC予想の内容は理解しやすいです。aとbを素因数分解した際の互いに異なる素因数の積を根基(radical)と言います。a+b=cとし、 c<rad(abc) がなることがほとんどですが、例外も無限に存在します。このとき、正の実数εとしたとき、c>rad(abc)^1+εとなるa,b,cの存在は有限個であるという予想です。
難問とされるだけあって、代数論からのアプローチだけでは難しく、ワイルズが楕円曲線とガロア表現で整数を抽象化したように、望月教授もモノイド(結合律を満たし、単位元が存在する代数構造)を特殊な形で捉えたフロベニオイド(物理的な位置を保持して新しい対象性を発見するもの)という新しい概念を使って、情報量を増やして証明に挑んでいます。
ABC予想の証明で、多くの問題を証明することができます。ティーデマンの定理、ブローカルの問題、フェルマーの最終定理など、証明済みのものもありますが、同じ証明が異なる手法で行われることで明らかになる特性もあります。望月教授の論文は長大なもので、ABC予想の証明は宇宙際タイヒミュラー理論の一部でもあります。天文学的な宇宙とは関係がなく、彼は環の構造が必ずしも保たれず、環のスキームもとしての一貫性も保たれないため、集合論的宇宙における性質を行き来するものとして、こう名付けたようです。
論文を読んでも難解で理解できませんが、これらが多くの基礎知識の基盤の上に成り立っているのだと思うと中学、高校の数学も未来の自分が理解するための第一歩だと考えて、数学を学ぶ意味が見えてくるかもしれません。