スポーツ界ではこんな言葉があります。
“Players win games, coaches lose them.”
「選手のおかげで試合に勝ち、コーチのせいで試合に負ける。」
本当にその通りだなって思うんです。僕たちにとっての選手は生徒たちで、僕たちがコーチで。選手たちにはそれぞれのポテンシャルがあって、適正があって、気持ちがあって、思いがある。コーチはそれを最大限に引き出す責任がある。教え、研究し、工夫して、構築し、伝えて、そしてそれらをし続ける責任が。どこかに不備があったなら。選手たちが不安を抱えたまた試合に送り込まれるようなことがあったなら。それはコーチの責任なのです。
それで試合に敗れたなら、それは僕たちの責任なのです。
“Players don’t lose games, coaches do. And that coaches don’t win games, players do. Coaches can put players in a position to win, but they are the ones who have to execute the game plan, make the plays, and ultimately win the game.” *1
「選手が試合に負けるのではない、コーチが負けるのである。そしてコーチが試合に勝つのではない、選手が勝つのである。コーチは選手たちを勝てる状況までお膳立てすることはできるが、彼らこそが試合の作戦を実行し、プレーを決め、そして最後には試合に勝利するのである。」
この言葉の本当の意味、伝わるでしょうか。もっというと、ようはPlayers can win games that coaches lose – only they lose is that coaches lose(選手はコーチが負けた試合にも勝つことが出来る。敗北するとすれば、それはコーチが負けた試合だけである)ということです。たとえ監督の作戦がはずれ、采配が狂い、誤った判断を下したとしても、選手はとんでもない力を発揮してコーチに勝利をもたらしてくれることがあるということです。
だからもし、勝利を手にすることができたなら。
それは選手のおかげなのです。
だからそれは、君たちが手にした勝利なのです。
勝つも負けるも選手次第だという人がいます。
そんなものは本人のがんばり次第だと。
負けたのはそいつの努力と実力不足だと。
そんな言葉で選手に丸投げにして、あとは自分次第だろと。
そんなことを言えるのは、あんたが観客でしかないからで。
そんなことをいうやつは、人を導く素質なんて欠片もない。
勝利はいつだって選手が勝ち取ってくれるものです。
敗北はいつだって指導者が導いてしまうものです。
僕たち大人という、子供たちにとっての指導者は、彼らを勝てる状況に導いてあげる責任がある。
やる気がないなら、やる気をださせる工夫を。
力不足なら、力をつけさせる作戦を。
優位に立つには、情報収集と研究を。
自信を持たせるには、裏打ちされた結果と努力を。
し続けて、いい続けるのが、指導者の宿命だから。
だからさ。勝てなかったのは、僕たちのせいだから。
その責任をひしひしと感じて、もう二度と同じ過ちを犯さないように。
また前を向いて進んでいきます。
辛いけど。前を向いて進んでいくしかないから。
どれだけ祈っても、地球は回り続けるから。
どれだけ恨めしく思っても、世界は歩みを止めちゃくれないから。
だからまた、地球があと三回まわったときには。
いや、何回まわりきった後でも。
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*1: Management Secrets of the New England Patriots: From Patsies to Triple Super Bowl Champs, James Lavin, 2005/1/31, P276