「自分のことを色であらわすと、あなたは何色ですか?」
就職活動なんかの面接でよく聞かれる問いです。僕が就職活動をしていたとき、この質問にどう答えるかという練習をする機会がありました。練習といっても、模範解答を感情を込めて自然に言えようになるまで繰り返し言い続けるというもので、与えられた回答は「白色と言え」というものでした。人生経験の少ない自分はまだ白色で、これから先輩たちを見習いながら求められる色に染まっていきます、的な。
もっとキレイな文言でしたけど、それをとにかく何度も言い続ける。何度も何度も。何も見なくても言えるように。急に聞かれてもスッと出てくるように。思えば、なんとも異様な光景だったようにも感じます。でも厳しい就職活動なんで、四の五の言ってられないってのがありましたから。
そんなことがあったんだと、数日後とある友人に話したときのことです。
「私なら虹色って答えるよ」って。そしてきらきらした笑顔でこう教えてくれました。
「虹は日本では七色だって言われているけど、国によっては三色だったり、十色だったり、あれで一つの色だって考えたりするの。それにね、もし同じ七色だったとしても、中身が違ったりもする。赤がないって考える国もあれば、あるって考える国もある。だから虹色には全ての色が入ってるの。赤になることもできれば、青になることもできる。私は自分の可能性を決め付けたくないから、だから私は虹色かな。」
就職活動もまだ知らない、自分より年下の女の子の口から出た純粋な言葉は、僕の胸に突き刺さりました。就職活動っていうそのときの課題に思考が囚われていたというか。目線が狭まっていたというか。
だって素敵じゃないですか、その考え方自体も、自分の思うことを素直に言えることも。
目標を立てること、それに向けて一心不乱に打ち込む事はもちろん大切なことだと思います。ただ、それに囚われてどうしても視野が狭くなってしまうことがあるんです。僕は、あまり若いうちから自分の可能性を決め付けてしまう必要性はないと思うから。自分がどうしてもやりたい、どうしてもなりたい、そのためには全てを捧げる覚悟があるって胸を張っていえることなら、いいと思う。
でもそうじゃないなら、そこには色んな可能性がありますから。十五歳で下す決断よりも十八歳で下す決断のほうが、十八歳のそれよりも二十二歳でのそれのほうが、きっともっと「本当の自分の願い」に近いものだと思うんです。年をとるほど自分のことを冷静に評価することができるし、周りをしっかりみることができているでしょうし。
虹のような輝きを秘めた皆さんには、その輝きを失わないままで。何色にもなれる可能性を秘めたままでいてほしいので。
幾度となく豪雨が地面にたたきつけられたとしても、後に雲ひとつない蒼天が一面に広がるように、僕は全力を尽くしますから。
虹が鮮麗に輝けるように。