教室ブログ

2015.04.21

コップいっぱいのプレゼント

新学期が始まってしばらく経ちました。進級や進学など、皆さんそれぞれに環境の変化が少なからずあったかと思いますが、如何お過ごしですか?

 

初めて一緒のクラスになる子や初めて先生、初めて学ぶ知識などなど、様々な初体験があったのではないでしょうか。僕もこれまで二十数度の春を経験してきたわけですが、環境の変化が激しいのはやはりこの季節でした。進級、進学、引越し、就職などなど。

 

春はきっとこれからも、僕たちにとって新たな刺激を与えてくれる季節であり続けるでしょう。

そんな季節の中でも、僕にとって一際記憶に強く残っている春があります。

 

大学三年生になった初春のことです。僕は今でこそこういう立場で勉強について語っていますが、もともとは偏差値40ちょっとの大学に通っていました。進学したころには、まさか数年後に先生と呼ばれるような職に就くなんて思ってもみませんでしたね。ほんとに。

 

そんな僕は二年生の終わりに、大学を変えるという一大決心をします。サボってたからできなかっただけで、勉強しだすと案外ね。変われるもんです。不思議なもので。そんなこんなで、もっとレベルの高い大学に行きたいと思い、選択肢は限られていましたが、編入試験を受け、無事春から新しい環境へと身を移すことができました。三年生だけど気持ち的には一年生ですから、当然気持ちはドキドキうきうきで。心を弾ませながら新たな学び舎に足を向かわせたわけです。

 

気分も新たに通い始めたその大学で、記念すべき最初の友人ができました。彼女は必修科目のクラスメイトだったんですが、ひょんなことで話すようになって、僕は編入、彼女も諸事情あって周りにまだ友人がいなかったもんですから、一緒に昼食をとったりするようになったのです。

 

そんなある日、また一緒に昼食をとっていたんですが、その日は彼女の誕生日だったんですね。数日前に彼女との会話でそれを知って、その時も一緒に食事をしていたんですが、まぁでもまだ四月も半ばを過ぎたぐらいで知り合ったばっかりですから。別にまぁ何か用意してっていうわけでもなく。普通に「誕生日おめでとう」って言って「わーありがとー」ぐらいの会話をしたぐらいで。

 

それからしばらく食事をしていると、彼女のコップが空になっていました。僕ものどが渇いていたので、彼女の分も一緒に水をついであげたんですね。

 

そこで僕は冗談で、「はい、これ誕生日プレゼントね」って、水で満たされたコップを渡したわけです。僕としては、「えーこれが~?」みたいな感じで笑ってくれるかなって思って(まぁ特に深く考えた行動でもなかったですけど)ちょっとした会話の一端に過ぎない程度のつもりだったんですけど。

 

そしたら彼女は、思いもよらなかった反応を示したわけです。

なにって、めっちゃ喜んだんですよ。

大げさなくらいに。

 

そりゃあまぁ、誕生日プレゼントがついであげた水だった割には、ですけど。
でも喜ばないでしょ。普通。

少なくともそのときの僕は、これで喜ばれるなんて思ってもみなかった。

でもやったーって。ありがとうって。うれしいって。笑顔でそういったんです。

 

僕は思わず、「えっそんな喜ぶこと?」って聞いてしまいました。

そしたら彼女はこういったんです。

 

「だって誰もがやってくれることじゃないでしょ?」

 

なんか脳みそが「わー」ってなったのを良く覚えてます。

たしかに。なるほどなと。そんなこと思っても見なかったけど、確かにそうだなって。

 

何十億人もが生きているこの世界で、一億人もが住んでいるこの日本で、何千人という人と出会ってきたこの人生で、誕生日を祝ってくれる人なんて、自分の為に水をついでくれる人なんて、どれくらいいただろう。どれくらいいるだろう。

 

そんなにいないじゃないですか。たぶん。

 

そしてそんな単純でわかりきったことに気が付くまで、僕は二十一年を費やした。

 

彼女に出会うまで。僕はその考え方には出会わなかった。
彼女に出会わなければ、僕はその考え方には出会わなかった。

 

すげぇなって。ホントに。

 

めっちゃ素敵じゃないですか。そういう考え方も、それで喜べる感性も。
何がこの子をそんな素敵な人間にしたんだろうって。今も不思議でしかたありません。

 

まぁ僕がめっちゃ感心するから向こうは逆に戸惑ってましたけど(そりゃそうですよね。自分にとって当たり前のことをやたら褒められたら、なんか辟易しますもん)。環境が変わるって事は、それだけ「初体験」と出会えるチャンスがあるということです。それは人だったり、目や耳で感じるものだったり、手や足を動かすものだったり、頭を使うものだったり、心が動かされることだったり。今回はポジティブな初体験の話でしたけど、胸糞悪い”disgusting”な初体験に出会うこともあるでしょう。僕が皆さんにお願いしたいのは、「開かれていてほしい」ということです。

 

何が?ってなると思うんですけど、何でもいいです。心がでも、気持ちがでも。

どのような初体験も、君が閉ざされていれば何も学ぶ事はありません。
君がその道を閉ざしてしまっている限り、「何も学べない」のです。
例えその体験がどれだけ「学び」の可能性を秘めていたとしても。

 

もしあのときの僕が閉ざされていたら、彼女の反応に何の感心もなかったかもしれない。お蔭様で、あのころの僕は比較的開かれていたようで。

 

若い頃は特に、結構閉ざしがちになってしまうものです。
そもそも行動範囲が狭いから。出会う人も限られているし。

 

クラス替えがあって、学校がかわって、生徒の皆からは様々な声を聞きました。「仲良しと一緒になったから楽しい」、「仲いいやつと離れたから嫌だ」、「知らない子ばっかりでつまらない」、なんだったりかんだったり。

 

「知らない子ばっかりだから楽しみ!だって新しい友達たくさんつくれるでしょ?」

彼女ならそう言ったのかな、なんて。

 

それを聞いて、「こいつめっちゃ素敵やん」ってなった子が僕以外にもいたのかな、なんて。

どうですか?そんな考え方、皆さんにとっては「初体験」じゃなかったですか?

 

この記事をシェア

教室検索

  • 郵便番号で探す
  • 市区町村名・教室名で探す

\入力はカンタン30秒

フリーダイヤル® 0120-20-7733 受付時間:10:00~22:00(年中無休)