教室ブログ

2010.10.13

文学の秋

 六十谷校の上出です。
 皆さん、いよいよ季節は秋真っ盛りですね。
 今年の夏はとても暑かったですが、あの時の暑さがまるで嘘であったかのように、朝晩はめっきり冷えます。
 私は海南から教室に来ているのですが、海南は下津との間に藤白の山があり、夏を過ぎるとその山から冷たい風が吹き降ろしてくるので、皆さんが思っている以上に秋冬は底冷えのする土地です。
 そんな土地で生活しているため、夏から秋に季節が変わるとき、私がいつもふと感じるのは「風の変化」。それまでは海の方から吹いていた熱い南風が、ある時を境にひんやりとした山からの吹き降ろしに変わるのです。
 そのとき、毎年のように私が思い出すのは、中学生のときに国語の授業で習った和歌の一首「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる」(藤原敏行、古今和歌集)です。「秋が来たとは、目にははっきり見えないけれど、吹いている風の感じに、ふと秋の訪れを知った」というような意味の歌で、有名な百人一首にも詠まれている少し悲しみや憂いを含んだ歌です。皆さんも学校できっと習ったことがあると思います。
 私は、季節の変わり目に物悲しげな思いでふとこの歌を思い出すとき、四季のある国に日本人として生まれて本当に良かったと嬉しく思います。そして、このような感性豊かな文学を残してくれた古代の先人に感謝の念さえ抱きます。
 皆さんも学校で習ったことを、勉強以外のところに持ち出して思い出してみてください。きっと面白い発見や感動があると思いますよ。

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